タイーム、シャマイム、デビッドデリの御三家を含む、東京で「イスラエル料理店」と考えられている5店を紹介します。どのお店も魅力が違うので、何がどう違うか説明します。それぞれの詳細記事もあります(メニュー、値段、解説etc)。+αは、裏イスラエル料理店です。
「イスラエル料理」とはどんな料理か
※読み飛ばしても、本題の理解に差し支えないです。
イスラエル料理を説明する上で避けられないのが、「イスラエル料理は存在しない」という弁明。イスラエルは1948年に東欧出身のユダヤ人が建国した国なので、国民(移民)の母国料理を突きつめると外国料理になる。だからイスラエル料理にならない。というロジック(かなりざっくりだが)。
イスラエル料理として、いつもいつもいつも名前が挙がる「フムス」も「ファラフェル」も「シャクシューカ」も、「イスラエル発祥の料理ではない」というのが共通見解。でもそれらは間違いなく、「イスラエルの定番料理」ではある。イスラエルでよく食べられる定番料理。それが「イスラエル料理」。
そんなイスラエル料理の正体を暴くと、少なくとも、「中東料理」「地中海料理」「コーシャ料理」「東欧料理」に分類できる。言い換えると、このどれもがイスラエル料理になりえる…とか、めしを食う前にベラベラ語られると萎える。このことをどう調理するかは、イスラエル料理(店)の醍醐味-ジレンマ-だと嘆きたい。
東京のイスラエル料理店5軒
紹介する前に断言しておきたい。「タイーム」「シャマイム」「デビッドデリ」は、東京の三大イスラエル料理店だと。なぜなら、真向から「イスラエル料理」を提供しているからだ。逆に言えば、他のお店は「イスラエル料理店」ではない。ではなぜ含むか。そのあたりも含め、説明していく。
1. タイーム/Ta-im @広尾
タイームは東京で一番有名なイスラエル料理店だと思う。東京に2店舗ある。丸の内と、広尾(と恵比寿の間)だ。広尾の本店は、「小綺麗なイスラエルの食堂」という感じ。お店のインテリア、壁に書かれたヘブライ語(イスラエルの公用語)、バイブスは間違いなくイスラエルで、ほかのどっかの国じゃない。料理が圧倒的に美味しい。
エルビスプレスリーの音楽が流れていて、このセンスがイスラエルのおっちゃんの店という感じで最高だった(この感想には偏りがある:理由はある)。内から滲み出るイスラエル。店長は「大将!」という感じで、愛嬌がある。たぶん料理が好きな人だと思う(プロの料理人だから、そりゃもちろんそうなんだけども)。
2. シャマイム/Shamaim @江古田
タイームと並び、圧倒的に有名なのがシャマイム。ここも分類すると食堂かもしれないが、タイームよりは、家庭料理といった雰囲気が強い。タイームに対しては「真似しても敵わない」と舌が直感したが、シャマイムには「もしかしたら」みたいな期待がある(そうはいかないにきまってるんだけども)。その気配がイスラエル料理で出ているところが、唯一無二だと思う。
ちなみに「シャマイム」はヘブライ語で「空」という意味。えらいもんで、店内ではSADS(清春)の「忘却の空」が流れていた。池袋を舞台にしたドラマ「IWGP」を思いだして(主題歌だった)、トキョ! という感じがした。かと思えば、イスラエルのしぶいミズラヒ音楽もかかっていたりで、耳からイスラエルが入ってくる。ホームパーティーにおじゃましたような感覚も味わえた。
3. デビッドデリ/David’s Deli @白金高輪
タイームやシャマイムとは、決定的に違う。それは何かというと、「デビッドデリは喫茶店」というところ(とくに雰囲気が)。完全に日本の喫茶店なのに、出てくる料理は、まがうことなきイスラエル料理。日本特有の小じゃれた気配もあって、「ロイヤルホストがイスラエル料理店だったら」みたいな世界線を味わえる。
デビッドデリはベーカリーでもある。ピタパンが美味しかった。「イスラエル料理=フムスとファラフェル」と気をとられがちだが、「ケーキや菓子パンが楽しめるイスラエルのカフェ」を思い出させてくれる。というか完全にそれだった。「イスラエルのカフェ」として、他のお店をぶっちぎっている気がした。
4. ファラフェルブラザーズ/Falafel Brothers @六本木
「ビーガン料理専門店」ということになっている。店名でも言っているとおり、ファラフェルサンドが名物料理。経営者がイスラエル人ということもあり、イスラエルのビール(ゴールドビール)も売っている。雰囲気はフレッシュネスバーガーみたいな感じで、「海外風? のファストフード店」という佇まい。3店舗あり、六本木が本店。
ビーガン料理専門店なので、イスラエルを売りにはしてない。ファラフェルの味も、イスラエルのものとは違った。ファラフェルという名の、なにか新しい食べ物のように感じた。美味しい。イスラエルでいこうとしてないけれど、随所に漏れる良質のイスラエル感が愛おしい。お惣菜のセンスが完全にそれだった。
5. クンバドゥファラフェル/Kuumba du Falafel @渋谷
クンバドゥファラフェルはイスラエル料理店ではない。無縁と言っていいくらいだと思う。でも、フムスとファラフェルのお店なので、イスラエル料理店にカウントされている。「イスラエル料理=フムスとファラフェル」みたいなことになっている。で、肝心のフムスとファラフェルは、異次元に美味しい。
「バル」のような佇まい。フムスをフムスでは出さないし、ファラフェルもしかり。味はというと、最高だ。フムスにはディルやターメリックがたっぷり含まれていて、ファラフェルサンドには、なんと大葉が含まれていた。このお店がそのままイスラエルに出店しても、等しい価値観で愛されそうな気がする。
イスラエルのベーシックなフムスやファラフェルサンドをインプットしてから行くと、より深く楽しめる気がする。
5店のまとめ
★タイーム @広尾/イスラエル食堂。料理が圧倒的に美味しい。
★シャマイム @江古田/イスラエル食堂。家庭料理の懐かしさ。
★デビッドデリ @白金高輪/イスラエル料理が出てくる喫茶店/カフェ/ベーカリー。
★ファラフェルブラザーズ @六本木/あくまでもビーガン料理屋。でもイスラエルの気配。
★クンバドゥファラフェル @渋谷/創作料理屋。フムスとファラフェル専門店。
+α:東京のパレスチナ料理屋など3軒
イスラエル料理とパレスチナ料理は同じ。とは口が裂けても言えないが、似てるか似てないかだと、似てる。フムスとファラフェルは、どちらの地域でもソウルフードだ(と思う)。東京には有名なパレスチナ料理店が2軒あるので紹介したい。さらに、イスラエル料理店でもパレスチナ料理店でもないが、この2つを含むレバント地方の料理店も説明する。
1. ビサン/Bisan @十条
ビサンは「パレスチナ料理」を謳う唯一のお店かもしれない。スローガンは「パレスチナの本格家庭料理。それは、中東で待つ優しい母の味。」。店内にはパレスチナの国旗や「ヨルダン川西岸地区&ガザ」の地図などあり、パレスチナの文化も味わえる。ちなみに「ビサン」はイスラエルの町だ(ガザにもある)。ビサンはパレスチナ系イスラエル料理店と言えるのかもしれない。
2. アルミーナ/Al Mina @神田
「地中海レストラン」となっているが、「地中海のどこ?」となれば「パレスチナ」となるのがアルミーナ。店員さん曰く、パレスチナのガザ出身(地中海沿い)で、オーナーはイスラエルのハイファ(地中海沿い)出身だそう。インテリアはパレスチナよりはエルサレム寄りで、イスラエル料理店と錯覚できなくもなかった。でもアルミーナは、「イスラエル料理店」とは言ってない。
3. パルミラ/Palmyra @池袋
「東京の中東料理店」として有名だ。レバノン出身のシェフによる、アラブ・シリア・レバノン料理のお店、となっている。レバノンもシリアも(パレスチナも)イスラエルの隣国だ。これらはレバント地域と総称され、その地域の料理は「レバント料理」と呼ばれている。ファラフェルは、ビサンよりアルミーナより、イスラエルに近かった。とても美味しい。
3店のまとめ
★ビサン @十条/パレスチナの家庭料理。(ビサンはイスラエルの町)
★アルミーナ @神田/地中海料理店だけどバックグラウンドはパレスチナ。
★パルミラ @池袋/イスラエル・パレスチナも含まれる、レバント料理。
圧倒的なイスラエル料理店3つ
タイーム、シャマイム、デビッドデリは、外しようがない。この3店をはしごしたら(メニューを読めば)、イスラエル料理を知らない人も、イスラエル料理の感じをつかめそうな気がする。フムス、ファラフェルetc、いつもあるな、と。
この3店はわかったとして、あえて4つめを選んでみる。それはパルミラとなる。なぜなら、パルミラはレバント料理店だから(あくまでも私の意見だけど)。イスラエル料理自体がレバント料理でもあるから、そんなびっくりするほど破綻しない。
そうなってくると、パルミラは最強かもしれない。イスラエル、パレスチナ、レバノン、シリア、ヨルダン、エジプト(は含みすぎかもしれない)あたりの人が食べても「あ、わかる、美味しい、懐かしい」という状況が発生しそうだから。
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