世界ごはんたべ記#88 東京のパレスチナ料理屋「アルミーナ」

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「世界ごはんたべ記」は食レポです、と言ってよいのかもしれませんが、違う気もします。1エピソードにつき、1軒のお店を紹介します。「世界」と名乗っている手前、異国のお店も母国のお店も登場します。



前回のエピソード「#87 東京のパレスチナ料理屋/ビサン」はこちら。「世界ごはんたべ記」の記事一覧はこちら

アルミーナとは

アルミーナの外観。

アルミーナは自分でパレスチナ料理屋とは言ってない。厳密には「地中海レストラン」だ。看板には「AL MINA」「MEDITERRANEAN DINING」「地中海レストラン」など書かれていて、中東じゃないような印象を受ける。へたしたらギリシャ料理屋と勘違いする人もいるかもしれない。でも芯はパレスチナだ。

パレスチナは「ヨルダン川西岸地区」と「ガザ」の二つ、という認識がある。どちらもイスラエルに隣接している。パレスチナのうち、地中海に面しているのはガザのほうなので、アルミーナはガザ料理屋か、とか解釈出来そうな気もするが、ガザ料理というわけではなさそうだった。

私がイスラエル(テルアビブ)に住んでいたとき、ガザからロケット弾が飛んできたことがある。私にとってガザは未知すぎやしない。イスラエルもパレスチナも、雰囲気だけならなんとなく知っている。パレスチナ料理に対して、定義を詰めようとかあまり思ってない。貴方がそう言うならそう聞く、という感じだ。

そういえば、東京のパレスチナ料理のビサンもイスラエルの町の名前だし、みんなだいたいそんな感じでいいと思う。滋賀県出身の人が切り盛りする海外の日本料理屋に飾られている金閣寺の写真に「日本料理・琵琶湖」とか書かれてても、別に驚かないのと同じだ。そういうのがプライスレスでおもしろいし、最高だと思う。

アルミーナの雰囲気

アルミーナが入ってる「元気ビル」。

アルミーナは、東京の神田にある。東京を知らない私にとって、神田は本とサラリーマンの元気な町という印象がある。えらいもんで、アルミーナの入居してるビルは「元気ビル」という名前だった。日本酒バルとかタイ料理屋とかが入っていて、にぎやかな感じだ。そんな元気ビルの地下に、アルミーナはある。

アルミーナの店内。

店内のインテリア。

いらっしゃいませー、と店員さんが案内してくれた。白い壁にクリーム色の石壁。パレスチナのベツレヘムで行ったレストランを思い出す。店内は無音で、元気があるか無いかだと、無い。でもこれはビルの名前に引っ張られてるだけなので、アルミーナに元気が無いわけではない。耳をすませば、調理音など聞こえてくる。

アルミーナのメニュー

ランチメニュー。(1/7)

コースメニュー。(2/7)

前菜のページ。(3/7)

パレスチナの伝統料理のページ。(4/7)

魚料理のページ。(5/7)

デザートのページ。(6/7)

ドリンクメニュー。(7/7)

メニューを見る限り、「上品な店」という印象を受けた。英語のフォントが優雅だ。「タブーリ」とか「ファットゥーシュ」とか、パレスチナ/イスラエルの定番サラダが、めちゃめちゃ高級な料理に見えてくる。日本語で「地中海レストラン」という響きには、たしかに(?)、なんか上品なイメージがあるような気もする。

ヴィーガン・プレート 

1200円。ピタパン、サラダ、ファラフェル、メゼ2つ、フムスがついてくる。

スープ付き。ひよこ豆やクミンの味がした。塩辛くて美味い揚げナス入り。

私の目的はだいたい、「ファラフェル」と「フムス」。ファラフェルはひよこ豆のコロッケで、フムスはひよこ豆のディップ。どちらもイスラエルでは(きっとパレスチナでも)、定番料理。ヴィーガン・プレートには両方含まれているので、頼んだ。「ヴィーガン・プレート」という表現に、クリエイティビティが視えた。「味噌汁と米」を、英語で「JAPANESE VEGAN FOOD」と表現するような感じか。

フムス

フムスには、ひよこ豆、レモン、ニンニク、タヒーニ(中東のゴマペースト)が含まれるのが一般的だ。アルミーナのフムスは、水分が多くてクリーミーで好みだった。塩の味が強くて、レモンとニンニクの味もする。美味しい。

メゼ1。ババガヌーシュとザアタル。

メゼ2。ミントやオレガノ入り。

フムス以外にも、2つメゼ(惣菜)がついてきた。1つはババガヌーシュとザアタル。ババガヌーシュは焼きなすとタヒーニを混ぜたもので、ザアタルはパレスチナ/イスラエルの定番ハーブだ(オレガノに似てる)。もう一つはミントやオレガノが含まれていた。

ファラフェル

ファラフェルは、ひよこ豆、クミン、コリアンダーなどを混ぜて揚げて作るのが一般的。アルミーナのファラフェルは、かなり柔らかかった。乾燥パセリがかかっていて、日本のコロッケみたいで美味しい。ファラフェルを食べ慣れてるイスラエル人が食べたら、ファラフェルと気づかないかもしれない。興奮した。

マンサフ

2420円。「パレスチナの伝統料理」とあった。

パレスチナ料理なのに、イスラエルの基準で判断してしまう自分がいる。イスラエルから離れたくて、未知の料理を頼んでみた。それがマンサフだった。羊肉を米とヨーグルトで食べる料理らしい。ウィキペディアではヨルダン料理ということになっている。ヨルダン料理でよく食べられる中東/アラブの料理か、と解釈しておいた。

ラム肉。

塩味しっかりめのラムがうまい。強力なアニスの風味。ヨーグルトのソースも動物性のウマミが爆発していて美味しい。好きすぎてちょっと引いた。さっきまで食べていた「ヴィーガン・プレート」を提供しているのが、同じ店とは思えないほど。気を抜くと、乾燥パセリがアルミーナやで! と訴えてくる。最高だ。

イスラエルでもパレスチナでも、この感じを味わうのは難しい気がする。東京の神田にしかない料理かもしれない。

ザクロとガザ

サービスのザクロジュース。

サービスで、ドリンクを選べた。不意打ちだった。なにかパレスチナらしいものを飲みたくて、とっさにザクロジュースを注文した。店員さんは「おー! ええやん」のような態度だった。イスラエルでは、ジュースといえばザクロという感じだった。「日本の酒といえばストロングゼロ」みたいな感じで(どういう感じだ)。

レジで売られていた「パレスチナの荒野に生息するセージ」。700円。

ごちそうさまをして、店員さんと軽く喋った。いつもの流れで自分はイスラエルのテルアビブに住んでいたことを伝えたら、「オーナーはハイファ出身」と教えてくれた。ハイファはイスラエルの神戸みたいな街だ。ちなみに店員さんは、パレスチナのガザ出身と言っていた。なるほど、だったら地中海料理屋だ。

今回のおしながき

アルミーナ/AL MINA
ヴィーガン・プレート /1200円
マンサフ/2420円

アルミーナの住所:東京都千代田区神田多町2丁2−3 第3ハヤカワビル B1F

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