「世界ごはんたべ記」の説明
「世界ごはんたべ記」は食レポです、と言ってよいのかもしれませんが、違う気もします。1エピソードにつき、1軒のお店を紹介します。「世界」と名乗っている手前、異国のお店も母国のお店も登場します。
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前回のエピソード「#86 ヴィーガン料理専門店/ファラフェルブラザーズ・一号店」はこちら。「世界ごはんたべ記」の記事一覧はこちら。
ビサンとは
ビサンの外観。
パレスチナ料理 ビサン。
「ビサン/Bisan」は、東京の十条にあるパレスチナ料理屋だ。「十条」とサラッと言ってるが、私は東京のことをよく知らないので、あまりピンときてない。故郷の京都にも「十条」はあるが、行ったことがなさすぎて、これまたピンとこない。
十条という地域にピンとこないにもかかわらず、通ってるような態度で「十条集合で」とラインした、東京に住んでる大学の同級生にだ。彼は「意外」と言ってきた。なんか意味不明だが、しっくりきた。2年ぶりくらいに会う友達だった。
ぜんぜんビサンの説明になってないが、そういう流れでビサンに行った。ビサンに行きたい自分の都合に、友人を巻き込む形となった。ビサンはパレスチナ料理のお店。パレスチナは、私がむかし住んでいたイスラエルの隣にある(と言っておく)。
ビサンの雰囲気
ビサンの前の道。
商店街のような道にビサンはある。なるほど、これが十条か(完全に知ったかぶりだ)。よくわからないけれど、シブヤとかハラジュクとは違う世界だということはわかった。
ビサンの店内。
店内にはアラビア語に聞こえる音楽が流れていた。耳だけなら「中東料理の店」という感じではあった。でも目を使って店内を見渡すと、「パレスチナの店」だということが、じわじわ伝わってくる。
パレスチナの国旗(と、昔の指導者のヤーセル・アラファート)。
パレスチナの地図。「ヨルダン川西岸地区&ガザ」とある。
トルコとかアラブとかなんかよくわからんけど中東の店? ということで埋もれる気は、さらさら無いような雰囲気だった。客が数名おり、店長とフレンドリーな感じで会話している。というか店長がフレンドリーだ。
ビサンのメニュー
アラカルトのページ。(1/9)
サラダ&ペーストのページ。(2/9)
肉&ケバブのページ。(3/9)
メインディッシュのページ。(4/9)
セットメニューのページ。(5/9)
デザートのページ。(6/9)
ドリンクのページ。(7/9)
シーシャのページ。(8/9)
パレスチナの本格家庭料理。それは、中東で待つ優しい母の味。(9/9)
「パレスチナの本格家庭料理。それは、中東で待つ優しい母の味。」と、メニューにあった。パレスチナの家庭料理であり、おかんの味。確かに、わかる。どっちも知らないけれど、そう言いたくなる雰囲気ではあった。
メニューには、ファラフェルやフムスやケバブなど、日本でも知名度の高い料理がちらほらあった。トルコアイスもあって、それはそれで食べたいと思った。「まるっと中東の定番料理を食べてみたい」という人も楽しめる内容だと思う。
ビサンの料理がおかんかどうかは、この時点ではわからなかったが、いろいろと優しいことには間違いないと思う。それは店長の喋り方からして、耳でも感じていた。
ファラフェル
1300円。ハート型か?
「ファラフェル/Falafel」とは「ひよこ豆のコロッケ」のような料理だ。パレスチナと食文化をほぼ共有するイスラエルでは、イケアのホットドック売り場(の横)にも売ってる。ソウルフードと言ってよいと思う。
ビサンのファラフェルの断面。
イスラエル料理屋だと、ファラフェルを主力商品としている(というか凝っている)お店が多い印象だけど、ビサンはそうでもなさそうだった。肩の力が抜けていて最高に美味しい。力んでないという意味で、おかんが作ってる感じはあるかもしれない。
「クミンとコリアンダー風味の手作り豆コロッケ」という感じだった。例えとしてのコロッケではなく、本当にコロッケという感じ。パレスチナ、というか十条、という感じで、イスラエルのファラフェルではない感じだ。美味しさは明明白白。
フムス
900円。
「フムス/Hummus」は「ひよこ豆のディップ」のような料理だ。ひよこ豆、ニンニク、レモン、タヒーニ(中東のゴマペースト)が含まれるが、必ずしもこの通りではない。日本でも家庭によって味噌汁に差が出るような感じで、幅がある。
お店によって、クリーミーだったり、レモンの酸味が強かったり、タヒーニが濃かったり、ひよこ豆のテクスチャが露わだったり、いろいろある。表記もいろいろあって、「ホンモス」とか「ホンムス」とかある。ピタパンで食べるのが一般的だ。
ビサンのフムスは水分量は多くてクリーミーで、タヒーニと塩が濃いめだった。ニンニクも感じる。かなり好みだ。このとき人生で初めてフムスを食べ(させられ)た友達も、「美味い美味い」と言っていた。人類にとって美味しい味なのだと思う。
ファラフェルチェック
ごちそうさまのとき、店長から「ファラフェルチェック」を受けた(嫌な感じじゃなくて)。ファラフェルチェックとは私が勝手に使ってる言葉で、「ファラフェルをなぜ知っているかの質問」という意味だ。日本でたまにある。
チェックの内容は(というかべつにチェックじゃないけど)、「中東に行ったことがあるか」「どこでファラフェルを食べたのか」といったものだ。イスラエルのテルアビブに住んでいたと伝えた。店長は「あーなるほど」となっていた。
この瞬間、お店で一番激しいノンバーバルコミュニケーションが発生していたと思う。店長もテルアビブに住んだことがあるらしい。他の客との会話では「イスラエルに帰ったときに」など言っていた。おかんのレシピはそのとき学んだらしい。
店長の話がおもしろく、意図的に訓練しないと習得できないレベルの言語(日本語)を使いこなしていることにいちいち気づけなかった。ノンバーバルでもバーバルでも興味深いコミュニケーションが味わえた。
ビサンのファラフェルとフムス。
もうイスラエル料理ということで話を進めてしまうが(厳密にはイスラエル料理は無い)、ファラフェルとフムスは、「イスラエル料理の名前を3つ挙げよ」という質問があれば確実に挙がる2つだ。
その2つをピンポイントで注文したので、何かが伝わったのかもしれない。店長は「みんなファラフェルはあんまり頼まないし」みたいなことを言っていた。ビサンはイスラエルにあるが、ここはイスラエル料理屋ではなさそうだった。
今回のおしながき
ビサン/Bisan
ファラフェル/1300円
フムス/900円
ビサンのHP
ビサンの住所:東京都北区中十条2丁目21−1 1F
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