イスラエルにロケット弾が飛んできて避難したときの話

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いつもはへんな食レポを書いています、ライターのがぅちゃんです。

イスラエルのテルアビブのアパートでくつろいでいたときにガザからロケット弾が飛来し、防空壕に避難したときの様子を書いています。2019年3月14日の出来事です。

テルアビブの街並み。「ホワイト・シティ」で世界遺産に登録されている。

テルアビブ

テルアビブの雰囲気。

テルアビブという町で3年くらしていた。テルアビブは地中海ぞいにあるビーチタウンで、イスラエルで2番目に人口が多い(40万人ほど)。国内では最大の商業都市なので、イスラエルの東京という感じ。私は、テルアビブのダウンタウンにあるマンションに住んでいた。部屋は南向きで、海も見えて、景色がよかった。

南からロケット弾はとんでくる。

木曜日の夜だったので、リビングで酒を飲みながら、ユーチューブで吉幾三など聴いていた。イスラエルは週末が金・土なので、木曜の夜は、日本でいう金曜の夜みたいな感じだ。土曜はユダヤ教の安息日(あんそくじつ)の影響で多くの店が閉まるので、パーティタウンなテルアビブは、木曜の夜からけっこうもりあがる。

この日の夜は、楽しみにしていたゲイイベントに行く予定だった。テルアビブはゲイフレンドリーなことでも有名で、アジア大陸で最大規模のレインボープライドの開催地でもある。「テルアビブ=ゲイフレンドリー」は、欧米圏のLGBT界隈ではわりと有名で、街にゲイとかがふつうにいる。

テルアビブのレインボープライドに参加するユダヤ教徒。

テルアビブの記事いちらん

空襲警報

テルアビブの夕暮れ。

20時ごろだったか、空襲警報のサイレンがなった。またうるさいバイクが通ったな、と思った。サイレン自体は、試験や追悼などで、年に2〜3回なる。けたたましいので、音は記憶にこびりついている。「騒音と空襲警報をきき間違える」というのが、週に1回くらいある。部屋が大通りに面しているので仕方ないんだけども。

サイレンの音。

部屋には、パートナーと私の二人。「空襲警報?」を「空襲警報!」と認識するのは、二人とも同じタイミングだったと思う。「えw」という表情でお互いを見た。「しゃあないなー防空壕いくかー」という、危機感のない義務的な態度で、もぞもぞ動き出す。飛んでくるとは聞いてたものの、都市伝説あつかいしていた。

ボーーン、パァーーン、ドーーン、がぜんぶ混ざったような音が、とつじょ空中に響き渡る。怖。聞いたことない音だ。ゴジラとか未曾有の怪物の鳴き声を想像して怖がるという遊びを子供の頃にしていたのだけど、それが現実になった気分で、いよいよ怖かった。パートナーと私は、「これはやばい」と認識した。

当時(2019年3月14日)のロケット弾に関するニュースの映像。

セキュリティに関するレクチャーをパートナーと受けたことがある。「ロケット弾が飛んできたら、まず窓から離れろ」と言われたのを強く覚えている。割れたガラスが爆風で荒れ狂うから危ない、ということだった。大小無数のナイフが舞う空間なんて、危なすぎて漫画でしか見たことない。ブリーチの朽木白哉の千本桜を思い出す。

あと、「バス停から離れろ」「エントランスに背を向けて座るな」というのもあった。つまりは「脅威を視認できろ」「無防備な状態を晒すな」ということで、なにごとにも通用する奥義的な基本概念だなと妙に納得した。余談だが、当時のイスラエルは世界幸福度ランキング13位。幸せとは知恵なのかもなと感じた。

バスは武器(になり得る)とも教わった。@アレンビー通り/テルアビブ

防空壕へ

ゴジラ思い出してから、本格的に避難を開始した。「逃げよー」が「逃げたい」になり、義務と願望が一致して、心と体がひとつになった気がした。ふだんジムでしか味わうことのない感覚だ。緊張感もある。マックブックとケーブル類を抱え、部屋のいちばん奥にある寝室のさらに奥にある、防空壕へと向かった。

防空壕の扉。ぶあつい。

防空壕と勝手に呼んでいるが、一般的には「セーフルーム」とか「ボムシェルター」と呼ばれている。公用語のヘブライ語では「מרחב מוגן」と表記され、直訳すると「protected space/守られた場所」。イスラエルの家には設置が必須と、法律で決められている。防空壕の形式は様々で、我が家のものはクローゼット式。

中の様子。

式…というか、かんぜんにクローゼットだ。クローゼットとしてデザインされているし、ふだんはクローゼットとして利用していた。ただしドアが異様に分厚く、中にはたいそうな換気システムとガスマスクが備えられている。物理攻撃と化学攻撃の両方から防御できる設計になっているらしい。

フタをあけるとこうなってる。

漫画の「ガンツ」を思い出す。

フタにはヘブライ語で説明があった。

強そうなクローゼットのくせに、ワイファイは弱かった。ふだんクローゼットでラップトップやスマホをいじらないので、こんなに弱いとは知らなんだ。なお、空襲警報1回につき10分は隠れろと言われていた。ねんのため20分隠れた。テルアビブは避難に90秒も猶予が与えられているので、20分は隠れすぎかも思った。

ガザからロケット弾が発射された場合、地域によって、避難に与えられた猶予が異なる。テルアビブは最長の90秒。でも、ガザ〜テルアビブの距離は神戸〜京都くらいあるので、90秒が長いか短いかは、哲学みたいなところがある。なんにせよ、ロケット弾が新幹線(Bullet Train=弾丸列車)より物理的に速いことだけは確かだ。

神戸〜京都は新幹線で30分。京都が地元なので、幼い頃から、京都駅で新幹線の通過をさんざん見送ってきた。京都駅のホームを駆けぬける恐ろしく速いあの車体より20倍速い鉄の塊が、なにかを傷つけるためだけにこっちへ向かってくる。と想像すると、かなり恐ろしい。

地域別、ロケット弾からの避難時間。Image via DW

クローゼットで避難中に見たツイッターでは、ロケット弾の情報がロケット弾より激しく飛び交っていた。現代の戦争を見てる気分。動画もちょくちょく流れてきて、流れ星でも見つけたかのように空に向かってスマホをかざす人々の姿を想像すると、悪いけど滑稽に思えた。ちょっと酔いそうで、きもち悪かった。

幸福度ランキング13位

結果として、この日、ガザからテルアビブに飛来したロケット弾は2発。被害は無かったそうだ。ただしこのせいで、ゲイイベントへの参加は、パートナーとの相談の上、自粛した。けっこう楽しみにしてたイベントだったので、私はかなり怒った。テロに予定を狂わされて、理不尽で腹がたった。

仕方ないなと思いながら、どうにか諦めきろうと、何かにすがる気持ちでイベント情報をチェックしたところ、「地下なので安全です」と言っていた。まじか。イベントは続行されていた。ハマスがどうとか、イスラエル・パレスチナ問題がどうとかは、無かった。あれっ、そんな感じ? という感じだった。

イベント続行の旨を発表する、イベントのページ。

すっげ。さすがゲイフレンドリーといわれるだけあるな。と、とんちんかんなことを思った。日常が平然と稼働している。あと、まあたしかに、この日イベントに行けた人は、行けなかった私よりたぶん幸せではある。

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