海外キマグレごはん#2 イスラエルのバッファローウィング

「海外キマグレごはん」の企画説明-おしながき-

「海外キマグレごはん」では、私が海外で食べたごはんを紹介します。日本国外で食べた自炊以外のごはんなら、なんでも紹介したいと思っています。ただし、何を「ごはん」とするかは、その日の気まぐれで決めようと思っています。

そしてこの企画、必ずしも「海外らしいごはん」ばかりではないです。「イスラエルのケバブ」の日もあれば「イスラエルのラーメン」の日もきっとあります。私はイスラエルに住んでいるので、イスラエルで食べた料理の発表は多くなる見込みです。

とはいえ、アメリカのハンバーガー、イタリアのピザ、クロアチアのクロマグロなど、できるだけ多くの国から多岐にわたる料理を紹介したいと考えています。何卒、よろしくおねがいいたします。



前回の記事「#1 イスラエルのカルボナーラ」はこちら。「海外キマグレごはん」の記事一覧はこちら

そもそもロスチャイルド家との関係がよく指摘されるイスラエルの中でも、「ロスチャイルド家ゆかりの」が全面に滲み出ることで有名な「ジクロンヤコブ」という町がある。この町を創ったフランスのロスチャイルド家の人物「エドモンド・ベンジャミン・ロスチャイルド」の父「ヤコブ」に由来し、「ヤコブの思い出」のような意味で名付けられたそうだ。私は勝手に「ジェイコブタウン」と呼んでいる。

ジェイコブタウンのダウンタウン。

なぜジェイコブか。ヤコブはアルファベットで「Jacob」 と綴ることができ、英語の発音をカタカナ表記にするならば「ジェイコブ」となるからだ。同じ綴りの名前でも国によって発音が違う。ジョセフ=ヨセフ、マイケル=ミカエル、ヘンリー=アンリ、ロバート=ロベルト、リチャード=リカルド、チャールズ=シャルル、デイビッド=ダビデなど、欧米の名前あるあるといえる。この議論には、日本でいう「ハマサキ?ハマザキ?」のやりとりを彷彿とさせるニュアンスが含まれる。

古代イスラエルの王「ダビデ」。又の名を「キング・デイビッド」。画像

おっといけない。ジェイコブタウンに話を戻そう。というか、バッファローウィングの話を始めよう。

ジェイコブタウンは国内では人気の旅行先で、週末は賑わう。ダウンタウンにある、テキサス流ラテン系アメリカ料理(いわゆるTex-Mex)の店で食べたのが、今回のバッファローウィングだ。たしか店名は「グリンゴ/Gringo」といい、意味はスペイン語で「ヒスパニック系ではないアメリカ人を指すスラング」らしい。日本語で言う「ガイジン」みたいなことだろうか。なんにせよ間違いなく外国人の私にとっては、(イスラエルの地中)海を越えて全力でテキサスを感じられる空間に違いなかった。

グリンゴにグリンゴが吸い込まれていく。

バッファローウィングはアメリカの超超超定番料理で、言ってしまえば「手羽先の唐揚げ」だ。辛いソースを絡めるのがミソで、ニューヨーク州のバッファローという地域が発祥といわれている。バッファローのウィング(=手羽先)、つまり「名古屋の手羽先」のようなことだから、名古屋の手羽先は「ナゴヤウィングwithスパイシーミソソース/Nagoya Wings with Spicy Miso Sauce」なんて言うとアメリカ人の食欲中枢をハリケーン・ハービーのように直撃するのかもしれない。

グリンゴのバッファローウィング。

グリンゴでいざバッファローウィングを食べようとした時、私はあるトラップに気づいてしまった。この店ではなんと、6種類もの調味料がカスタマイズできたのだ(店員さんが急に色々持ってきてくれた)。ケチャップとマヨネーズは想定していたものの、粒入りマスタード、バーベキューソース、ホットソース、さらにはチミチュリ*まで味わえるなんて、思ってもみなかったことだ。

6種類の調味料。

*チミチュリとは、要はパセリやニンニクのピクルスで、アルゼンチン発祥の調味料だ。肉にかけて食べるのが一般的と言われている。ところでイスラエルの飲食店では、料理の名称を表示するとき、定義が(いくつか)該当する既存の品名を引用する。だから「チミチュリ」はシェフの気まぐれで「サルサベルデ」にも「サルサ」にも「ピクルス」にもなりえる。これをカルチュラル・アプロプリエーションと言うのかどうか、という判断は該当地域の人間にまかせるとして、機転が利いて白黒ハッキリしている説明なので、外国人の私にとっては分かりやすくて助かるし、いいと思う。

(あくまでもイスラエルの)チミチュリ。

ここでふたつ気になったことがある。

1:グリンゴのバッファローウィングはデフォルトでハニーマスタードソースを選べるのに、それとは別途で粒入りマスタードも追加できた。追いマスタードかよオイ! これはまるで、一品たべた後にオーダーしたおかずの盛り合わせに、さっきの一品も含まれていたような気分だ(馬鹿よ貴方は)。でもこのとき味わう余剰を、私は勝手に「エクストラバガンザ-ぜいたく-」と呼んでいるから、べつに嫌いではないし悔しくもない。

2:今回のチミチュリは、無料にも関わらず明らかに手が込んでいて、圧倒的にホームメイドだった。この体験をあえて日本で例えるならば、牛丼チェーンの紅生姜が、その日出勤しているパートのおばちゃんの自家製漬物にすり替わっていたような気分だ。おばちゃんのチミチュリは(多分おばちゃんじゃないのだけれど)、私の口の中で居座っていたやかましい洋からしのエクストラバガンザを一撃-ひとくち-で追い払ってしまった。

この日のジェイコブタウンで、グリンゴの気まぐれチミチュリが、結果としてごはんMVPに輝いてしまったことは、言うまでもない。そして忘れる前に、ひとつだけハッキリしておきたいことがある。

3(NEW!):ジクロンヤコブ(זכרון יעקב)は、ワインで有名な町だ。

次の記事「#3 イスラエルのカリフラワーロースト」はこちら