世界ごはんたべ記#3 アメリカの焼肉屋「牛角」

「世界ごはんたべ記」のせつめい

「世界ごはんたべ記」は、ライターのがぅちゃんによる外食の記録です。どんなお店で何を食べたか、どんなことを思ったか……などなど、じゆうに書いています。

海外ぐらしが長いので、異国のお店はひんぱんに登場します。とはいえ「世界」と名乗っている手前、母国のお店も発表していかねばなぁと思っています(……か?)。



前回の記事「#2 アメリカの海鮮料理屋/ソルティ・ドッグ」はこちら。「世界ごはんたべ記」の記事一覧はこちら

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ブルックライン

アメリカはマサチューセッツ州のブルックラインという町に滞在していた。ブルックラインは、州都・ボストンの隣町(というかほぼボストン)。絶妙な地形で、地元の人に「いやもうあそこはボストンやろ」と言われがちな地域だ。

ブルックラインの場所。(赤がボストン)Original image:CC0  

ブルックラインは、アメリカ35代大統領のジョン・F・ケネディの生誕地としても知られている。経済的に豊かで教育への関心が高い家庭が集まる地域、といったイメージ。有名なボストン大学(通称:BU)もあって、けっこう学生だらけ。

閑静な住宅街、という感じ。

私が生まれ育った京都で例えるならば、立命館大学生がめちゃいる上京区ならびに北区のような感じ。ここはアジア系の学生がとくに多くて、むかし「江南スタイル」で一世を風靡した韓国の歌手「サイ/PSY」が通ってたのもこの大学。

江南スタイル(GANGNAM STYLE)のミュージックビデオ。

アジア人がとびきり多いブルックラインだし、あの「牛角」があっても私は驚かないつもりだったけど、「うわ、北野白梅町やん*」と感じてしまった。牛角の隣には中華料理屋とダンキンが並んでて、王将とミスドが並んでるみたいに見えた。

中華料理屋「シシュワン・グルメ」。(シシュワン/Sichuan=四川)

「ダンキン」はアメリカのミスド。マサチューセッツ州発祥。

嵐電(らんでん)・北野白梅町(きたのはくばいちょう)駅。220円で嵐山に行ける。

牛角・ブルックライン店

牛角のアメリカの店舗は、意外と多い。ブルックラインがあるマサチューセッツ州には3店舗あり、全てが都会-ボストンエリア-に集中してる。ブルックライン以外の店舗は、ハーバード大学があるケンブリッジ店、繁華街エリアのサウスベイ店だ。

地下鉄「ハーバード駅」。

これら3つを強引に京都で例えるなら、ブルックラインが「立命館大学テリトリー・北野白梅町」、ケンブリッジが「京都大学テリトリー・出町柳」、サウスベイが「京都最大の繁華街・四条河原町」となる。微塵の隙も無い、周到な立地だこと。。

3つの位置。

京都の人にしか伝わらない例えを用いてしまい、申し訳ない。でも、ここボストンにて、牛角がしたたかに展開しているということも、ちょっと言っておきたかった。 あと、ボストンは学生と歴史の街なので、そもそもが京都みたいな感じだ。

牛角・ブルックライン店。

需要を抉るえぐい立地の、牛角。正式名称は「Gyu-Kaku Japanese BBQ/ギューカークー・ジャパニーズ・バーベキュー」。ブルックラインでは、近所の有名な日本料理屋「フーガーキュー」とごっちゃにしてる人おるよ、とも言いたい。

フーガーキュー(風雅居)の動画。

「フーガーキュー/FuGakyu」と「ギューカークー/Gyukaku」。これはまるで車の「ホンダ/Honda」と「ヒュンダイ/Hyundai」みたいな感じだ。どちらも英語の発音は(ほぼ)ハーンダー。

牛角・ブルックライン店の様子。

入店すると、店員さんたちが「いらっしゃいませ〜!」を合唱した。えらいもんで、アジア系の店員さんが多かった。多分現地の学生さんで、アルバイトなのだろう。アメリカ人かどうかは、見た目ではわからない。

イーデンカイ*みたいな店員さんが案内してくれた、座席。

BBQの網。

火の調節。

単品メニュー。

セットメニュー。コロナ以前は食べ放題もやってたらしい。

イーデンカイは、ハワイのウクレレ奏者。

メニューはというと、あくまでもジャパニーズがベースの韓国系パンアジアな感じだ(どんな感じだ)。韓国料理も混ざりつつ(そもそも日本の焼肉がそうだから)、あくまでも日本の焼肉を提供する、アジア系アメリカ料理(とも言えるのか)。

日本の牛角のオリジナリティは崩さずに、アジアの総合的なグルメセンスをひっさげて、いかにアメリカで受け入れられ……のようなことが、ものすごく考えられた読み物(メニュー)、という印象を受けた。

使い捨ておしぼり。

裏には、日本でしか見かけないタイプの日本語が書かれてた。

仮に、アジア料理に興味がないアメリカ人が連れてこられても、文字通り、食いっぱぐれないメニューが揃ってる。一品はアジア系の料理がほとんどだけど、肉はアメリカ人が慣れ親しんだ名前のBBQとかになってる。すごいなと思った。

3種のタレと、トング、割り箸が基本装備として与えられた。

ビールは、アサヒスーパードライ。

それではせっかくだし、食べたものを一品ずつ、ばかまじめに紹介していこうではないか。

牛角サラダ

「ダイコン千切り」と「ごまだれ」が、アジア。

アメリカのレストランにも「とりあえずサラダ」みたいな流れは存在して、白羽の矢がたつ牛角サラダ。 ガーデンサラダ(緑のはっぱ)に、キュウリ、ゆで卵、プチトマト、ダイコン千切り、パプリカみじん切りが乗ってて、ごまだれがかかってた。

頂上の赤ピーマンが、アメリカのサラダとしての安心感を、俄然ひき立てる。

バッファローウィング

総合的に一番キマってた。

バッファローウィングはアメリカの前菜の超定番。こぶりの骨付きフライドチキン。牛角のは甘辛なミソがまぶされてて、名古屋の手羽先のような感じだった。日本料理をアメリカで流行らす最高のやり口をとくと見せつけられたような気分。

一般的なバッファローチキンはこんな感じ。@ジェネラルストア/NH州

 ツナ・ボルケーノ

直訳すると「マグロ火山」。

バッファローウィングから、やや遠くへ攻めたような感じで、個人的には一番好きだった。要するにマグロの寿司だが、シャリが油で揚げられて、トッツ(Tots) 状になっている(やられた!)。その上、文字通り、ネギトロがかかっている。

トッツ状に揚がったシャリ。

トッツとは、日本で「ミニハッシュドポテト」と呼ばれてるやつのこと。

寿司が一般化したように思えるアメリカでも、「ネギトロ」はほぼ無名。そんな「ネギトロ」をアメリカの共通理解に落とし込んだ結果、「ボルケーノ=火山」になったというのが良い。そう、ネギトロは火山。

(あとこれは完全に独り言だけども、では今後フライドポテトにネギトロを乗っけてもやってけるってことか? トッツはイモのフライド寿司ってことか? じゃあイモは寿司か! なるほどなッてちょっとまてどういうこt)

牛スシ

2個〜。

日本の居酒屋のワタミとかでしれっと出てきそうなくらい、素直にお寿司だった。つけあわせのワサビが美味しかった。スーパーで売ってるチューブのワサビではないということは、痛いほど伝わった。

タン塩

レモン付き。

「日本の焼肉のタン塩」を一切崩さずに提供されていたことに驚いた。アメリカでは、タンは一般的ではない。なんだったら、ゲテモノ扱いされている。日本の焼肉では特に意味もなく最初にタン塩を頼む、という文化込みで、友達に食べさせてみた。

まんなかにパセリ。

すると友達は「うん美味しい」と言っていた。彼はミートスパゲティやハンバーガー以外をまずいと言うタイプ米国人だが、「焼いてしまえればタンも美味いbeefになれる」ということがわかった。他人の食わず嫌いを克服どころか征服した気分。

タン塩のあと、網交換が行われた。

ハンガーステーキ

タレは、ミソかガーリックが選べる。 

この名前を見た時に「アメリカの牛角やるな」と感じた。 「ハンガーステーキ/Hanger Steak」は、アメリカでも普通の肉メニュー。みんな知ってるし、いきやすい。そういえば昔くらしていたイスラエルの日本食屋もハンガーステーキだったな。

イスラエルの日本食屋「ヤパン」の、ハンガーステーキ。(詳細記事

これは例えば、日本でイタリアンレストランに行った時、 「アーリオオーリオ」を「ペペロンチーノ」って呼ぶ、とかに似てる。「ラグー」でも「ボロネーズ」でもなく「ミートスパゲティ」。伝わるから、「おや、食べたいぞ」と想える。 

 すきやきビビンバ

夜食で出されたら瞬殺。

ビビンバはいくつか種類があった。「すき焼き」を選んだ。ほんとそのまま、すき焼きの味だった。おいしい。すき焼きは日本のフレーバーだから、韓国のビビンバも日本の味にさす、日本のマクドナルドのテリヤキバーガー的な感動があった。 

チキンガーリックヌードル

鶏ソボロうどん、のようになってた。

期待していなかったにも関わらず一番印象に残っているのがこれ。アメリカの中華料理屋とかにある、アメリカ人向け(?)の「ブロッコリービーフヌードル、またはライス 」といった類(たぐい)のメニューを彷彿とさせた。 

ねぎ、赤ピーマン、白ごま。

私は”たぐい”系のメニューを食わ嫌いするのだけれど、 せっかくのUS牛角だし、いっておいた。日本では絶対に受け入れられないほどのガーリックましましのウドン……っておいおいおい、最高かよ。背徳的な美味しさで、友達まで喜んだ。 

それにしても強い。「焼肉や餃子をたらふく食べた後のニンニクの臭い」を全て一皿に凝縮させたような、強化系ガーリックフレーバー。漫画・ハンターハンターの主人公のゴンが一撃に力を込めすぎて髪の毛が伸びすぎた名シーンを思い出した。

髪型が変わりすぎたため、友達がびっくりしている。ハンターハンター29巻より。

チョコレート・ラヴァ・ケーキ

左にバニラアイス。

中からアツアツのチョコレートが溶岩(ラヴァ)のように流れ出してくるタイプの、チョコレートケーキ。日本のグルメの真骨頂はおやつとかコンビニスイーツなんだぜ〜〜、という気持ちを代弁してくれそうな美味しさだった。

抹茶のミルクレープ

左にバニラアイス。

抹茶に関しては、もうこれが日本料理とかアジア料理とかって思わない子供もそろそろ出現してるんじゃないかというくらい、普及してる(グリーンティー自体は日本だけのものじゃないし)。国籍を選ばないZ世代な抹茶料理だった。

いただきましたゼ。

出演-おしな・がき-

牛角/Gyu-Kaku Japanese BBQ
アサヒスーパードライ/Asahi Draft/7 USD
牛角サラダ/Gyu-Kaku Salad/8 USD
バッファローウィング/Miso Chili Wings/10 USD
ツナ・ボルケーノ/Spicy Tuna Volcano/8 USD
牛スシ/Gyu-Sushi/5 USD
タン塩/Beef Tongue/11.50 USD
ハンガーステーキ/Bistro Hanger Steak/9 USD
 すきやきビビンバ/Beef Sukiyaki Bibimbap/9 USD
チキンガーリックヌードル/Chicken Garlic Noodles/10 USD
チョコレート・ラヴァ・ケーキ/Chocolate Lava Cake/7 USD
抹茶のミルクレープ/Lady M’s Green Tea Mille Crepe/11 USD

牛角・ブルックライン店の位置。

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