「海外キマグレごはん」の企画説明-おしながき-
「海外キマグレごはん」では、私が海外で食べたごはんを紹介します。日本国外で食べた自炊以外のごはんなら、なんでも紹介したいと思っています。ただし、何を「ごはん」とするかは、その日の気まぐれで決めようと思っています。
そしてこの企画、必ずしも「海外らしいごはん」ばかりではないです。「イスラエルのケバブ」の日もあれば「イスラエルのラーメン」の日もきっとあります。私はイスラエルに住んでいるので、イスラエルで食べた料理の発表は多くなる見込みです。
とはいえ、アメリカのハンバーガー、イタリアのピザ、クロアチアのクロマグロなど、できるだけ多くの国から多岐にわたる料理を紹介したいと考えています。何卒、よろしくおねがいいたします。
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前回の記事「#2 イスラエルのバッファローウィング」はこちら。「海外キマグレごはん」の記事一覧はこちら。
「カリフラワー」だったりする。
中東料理といえば、なんだか馴染みのない名前の「フムス」とか「タヒーニ」といった食べ物が有名だ。しかし実は、イスラエルの定番食材は「ナス」とか「カリフラワー」だったりする。ナスとカリフラワーは、イスラエルの焼き野菜の二大巨頭だ。これらは日本でも(というかどの国でも)手に入る食材だから、大きなオーブンさえあれば、どこでも作れる。
イスラエルのナスは大きい。
「イスラエルのカリフラワーロースト」
「カリフラワーロースト」はイスラエルの飲食店にほぼ必ずあるメニューだ。ない場合は、代わりに(?)ナスがある。特徴は焼き方にあって、カリフラワーを一個まるごとオーブンにつっこみ、表面が焦げるまで焼く(ナスの場合も同じように焼かれる)。まるごと焼かれたカリフラワーがそのままテーブルに運ばれることも珍しくなく、そのビジュアルのプレゼーションでもって、「イスラエルのカリフラワーロースト」と承認されている。
イスラエルのカリフラワーローストのプレゼーションは丸焼きのケースが目立ってはいるが、実際はケースバイケースだ。サラダのブロッコリーみたいに細分化されて皿に盛られることは多いし、そもそも、提供される皿の面積でカリフラワーのサイジングは変わる。インテリアデザインにおいて、家具のサイズが部屋の広さに制限されるのと同じことだ。
観光レストランのカリフラワーロースト。
創作レストランのカリフラワーロースト。
ギリシャ料理屋のカリフラワーロースト。
おしゃれビュッフェのカリフラワーロースト。
ユダヤ教徒向けビュッフェのカリフラワーロースト(左はナス)。
丸焼きへの憧れ
様々なフォルムやサイズで臨機応変に提供されるイスラエルのカリフラワーローストだが、「カリフラワーはできるだけ大きめで提供したい」「ぶつ切りでも皿の限界まで盛りたい」という作り手の願望というか傾向のようなものが感じられなくもない。その願いが行き着く先には、「丸焼きへの憧れ」のような消費者の期待があるのだろう。
カリフラワーローストがテーブルに運ばれてきた時、やっぱり「丸焼き」のほうが意味もなく盛り上がる。これは誕生日のケーキにも似た心理で、ホールで運ばれてくるのと、カットで運ばれてくるのとでは、まるで意味が違う。ケーキがすでにカットされた状態で運ばれてきたら、期待に反して、たぶん盛り下がる。
ミズノン
そんなカリフラワーローストにまつわる「丸焼きへの憧れ」という需要をクリーンヒットして支持を得ている有名店があって、それが、この記事のカバー画像のカリフラワーローストを提供する「ミズノン/Miznon」というお店だ(本来はピタパンサンドイッチのお店だが)。ちなみにこのお店は、超能力者のユリゲラーと私が暮らす(同棲はしてない)、テルアビブにある。
ミズノンの店内。
カリフラワーの棚がある。
棚で注文待機中のカリフラワー。ひとつ1,020円/34シェケル。
チーズの味
いざカリフラワーローストをオーダーすると、棚のカリフラワーが即座に再加熱されて提供されるシステムだ。今までイスラエルで色々なカリフラワー料理を食べたけれど、ミズノンのカリフラワーローストはダントツの美味しさだった。
カリフラワーの加熱に尋常でない神経を注いでいて(と過言したいくらい)、ひとくち目の歯ざわりからすでに違うのだ。芯までしっとり熱くて柔らかいし、まるでスープの爆弾のように、噛めばウマミがジワっと爆ぜる。もうわけわからなくて、チーズの味がした(だって口の中で溶けたし)。
ところでミズノンは、そんな至高のカリフラワーローストを秒で脇役に追いやる、究極のピタパンサンドイッチを提供している(というかそもそもそれがメインのお店だ)。彼らにとって、カリフラワーローストは、あくまでもオマケにすぎない。ゾッとする話だ。
ラムケバブのピタパンサンドイッチ。まず、肉が圧倒的に美味しい。
テルアビブには「ミズノンはストリートフードで最強」という都市伝説がある。食後それは、急に信ぴょう性を帯びたのだった。