イスラエルのテルアビブに住んでいました、ライターのがぅちゃんです。
テルアビブの住宅街。
現地では(ほんとうに)誰もが知ってる定番料理の「ジャフヌン」。イスラエルの東京・テルアビブで最も有名な専門店「Jachnun Mul Hayam」までジャフヌンを買いに行き、食べてみました。
イスラエルの雰囲気
イスラエルは中東の地中海に面しており、ギリシャやトルコに似ています。72年前に東欧出身の移民(ユダヤ人)に建国され、今も国民の約7割がユダヤ人(うち約半数はユダヤ教徒)。ものの考え方は概ね欧米式で、アメリカにも似た社会です。
テルアビブの街並み。
タバコ休憩するユダヤ教徒。ユダヤ教最大の聖地「嘆きの壁」にて。
ゲイイベントに参加するユダヤ教徒。@テルアビブゲイプライド
極端にいえば「国民全員がハーフ」のような環境なので、海外文化が自国文化としていとも簡単に馴染む土壌があります。そんなイスラエルの食文化を端的に説明すると「東欧料理と中東料理と地中海食が日常食化したアメリカ」といった感じ。
それを最もよく表している現地料理が「イスラエリ・ブレックファスト」。
アジア料理で例えるならこういう状態。(定番寿司盛り合わせにパッタイが付く)
「スシサンドイッチ」は「イスラエルの定番料理」と言われている。
「ジャフヌン」とはどんな食べ物か
ジャフヌンの一般的なビジュアル。
「ジャフヌン/Jachnun」はペイストリーなので、パンの一種です。元々は中東のイエメンに住んでいたユダヤ人が食べていた料理で、イスラエルに移住したイエメン系ユダヤ人が広めた料理ということになっています。
ジャフヌンの基本形態は棒。一本、二本、という数え方ができそう。
ジャフヌンは、現在ではイスラエルの定番料理。現地ではユダヤ教徒以外の人もよく食べます。イスラエルの国営航空会社「エルアル航空」の機内食に採用されていたり、 スーパーで冷凍食品として売られていたりします。
機内食のジャフヌン。
冷凍食品のジャフヌン。
作り方はシンプルで、「薄く延ばして油を塗って丸めた棒状の生地を鍋で一晩焼く」というもの。卵もしばしば一緒に焼かれます。あっさりしたトマトソース(サルサ)、辛い調味料(スクッグ)、ゆで卵(厳密には焼き卵)と食べるのが一般的。
「ジャフヌンの作り方」の動画。
テルアビブのジャフヌン屋「Jachnun Mul Hayam」
テルアビブでジャフヌン屋を探すと、必ず名前が挙がるのがこのお店。テルアビブで最も栄えている中央区(Central)にあります。普通のアパートでジャフヌンを作っているらしく、その様子も面白がられています。
平均的な中央区の景色。
「緑が多い」とか「ボヘミアン」とかは、テルアビブを形容するときの頻出単語。
そんなテルアビブのジャフヌン屋「Jachnun Mul Hayam」のエントランス。
お店にたどり着けない
ネットでお店を検索してみたところ、「アパートの中にあるからあとは自分で探せw」のようなボヘミアンな情報が目立ちます。まずは機械を信じてグーグルマップに指示された建物に入りましたが、全く関係のないアパートでした。
グーグルマップに指示されたアパート。
イケアで売られてそうな外観。
イスラエルのイケア。(ディスプレイが中東料理)
アパートの鍵は空いていたが、もちろんジャフヌン屋は無かった。
ジャフヌン屋があるアパート候補の建物の1Fにはピザ屋があったのですが、そのピザ屋の前を(焦った顔で店内を睨むようにして)5回ほど往復したため、怪しまれ始めたのを覚えています。仕方なく隣のコンビニに入って、人間に場所を聞くことに。
近所にあった、ウサギ(?)のオブジェ。(ユダヤ教徒はウサギNG)
コンビニのレジのお兄ちゃんに「ジャフヌン屋 どこ」とやつれた聞きかたをすると、やれやれな様子で道を説明してくれました。しかしながらその説明もよくわからなかったので、結局そのお兄さんにジャフヌン屋まで連れてってもらうことに。
ジャフヌン屋があるアパートの入り口へ続く路地。
ジャフヌン屋があるアパートの入り口。
連れて行かれたアパートがあまりにもアパートなので、お兄ちゃんの家に連れていかれた気分。お兄ちゃんがドアのベルを鳴らすと、やけに大きな音で扉が解錠され、中から「小柄な給食のおばちゃん」のような人が出てきて注文をとってくれました。
アパートにはいってすぐの黒い扉がジャフヌン屋。
扉だけトンチンカンな重厚感。アップグレードされたセキュリティを感じる。
私が英語で「ジャフヌン」と言うと、おばちゃんは「トゥエンティファイブ」と言いました。25シェケル/750円を準備します。スーパーで万引きした人が連れて行かれる事務所風の店内で待つこと約5分、あつあつのジャフヌンを手に入れます。
店内の様子。イートインできるらしい。
ボヘミアンなジャフヌン屋とはいいがたい警備態勢。
事務所に積まれた、稼働していないジャフヌン鍋。飯盒(はんごう)を思い出した。
渡されたジャフヌン一式。
ジャフヌンを開放
コロナ禍でイートインができなかったので、家に持ち帰って食べることにしました。なん十年か前に京都の実家でミニ四駆の箱を開封してた時を思い出しながら、おばちゃんに渡されジャフヌン一式を開放していきます。
ジャフヌン一式からオーラが立ちのぼっているかのように視えた。
アルミホイルに包まれた物体2つ、液体のタッパー2つ、が入っていた。
大きなアルミホイルの中にはジャフヌン2本ぶん。鍋の名残がある形状。
トマトソースと、みどりの辛いソース。
たまご。
まきずし! つけもの! しょうゆ! わさび! のような、お手本のような布陣。
ジャフヌンを食べる
これまでに私は一度だけ(機内食の)ジャフヌンを食べたことがありました。でもあの時の私はとんでいたので、味の記憶も飛び気味。我が家で地に足つけて集中して食べてみると、あのときの味わいがデジタルリマスター版で蘇りました。
「これぞジャフヌン!」がカムバック。
ジャフヌンは脂を大量に含むため、かなりモイスチャー。クロワッサンを芯まで油に浸したような水分量で(でもびちょびちょではない)、持つとカレーパンやドーナツくらい手に油がつきます。その食感は、伸びないモチ(またはグミ)。
材料には蜜や塩が含まれるけれどスイーツほど甘くなく、 とはいえしょっぱくもない塩梅。味の属性を無理やり日本の食べ物で例えると「ハッピーターン」。でもテンションは低めで、「幸福、戻ってくる」くらい噛み締めがいのある、シブいうまみ。
「小麦と蜜と塩」を味わう質素な料理のハズなのですが、脂を多く含むためか、妙に食べ応えがあります(まるで油モチ)。 そこで必要となってくるのがトマトソースのサルサ。「すりおろしトマト」くらいサッパリしているので、辻褄が合います。
不安を感じるくらい潔い、トマトだけの味。
トマトに飽きはじめた頃に、ジャフヌン界のわさび「みどりの辛いソース」が必要となってきます(私は)。その正体は「コリアンダーと唐辛子のペースト」で、中東のイエメン発祥の「スクッグ/Zhug」という調味料。
スクッグ。わさびよりは「食べるラー油」みたいな使い方をする。
完全体のジャフヌン。
あとはつけものポジションの焼き卵で適度に口直しをしつつ、口内の刺激を保ちながら完食までもっていきます。こう説明すると作業のように聞こえますが、実際にジャフヌン食べの後半はちょっと飽きてた……というのが正直な感想。
イスラエルの料理はなにかと卵をよく使う。
退屈と感じましたが、ジャフヌンはそもそも朝食メニューと知って「だとすると最高」と納得しました。モチとかグミとかハッピーターンをディナーの皿に盛られてもだけど、軽食としてなら最高! となる。そんな考え方がハマる食べ物でした。
ジャフヌン屋「Jachnun Mul Hayam」の概要
・ジャフヌン一人前 25シェケル/750円
・住所:HaYarkon St 22, Tel Aviv-Yafo
・営業時間:毎日10〜19時(土曜のみ6時オープン)
「Jachnun Mul Hayam」の位置。
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