アメリカのキャンプ場では誰もキャンプしてない

アメリカで初めてキャンプした。キャンプとは、自然とふれあうアウトドア・アクティビティ! と思い込んでいたが、ぜんぜんそうじゃなかった。はなしが違った。だってべつに、自宅でもキャンプはできるもん。ではキャンプとは? ひとことでまとめると、キャンプではない。意味不明なので、もうすこしちゃんと説明してみる。

友達の家の庭。テントもあるけどキャンプはしてない。

アメリカのキャンプ

わたしのアメリカの場所。Image:CC0

アメリカといっても、広さが日本の26こぶんもある国だから、ひとことでアメリカと言いきれない。だから私の場合、地図のアメリカの右上にある「ニューイングランド地方」をアメリカとしている。「関西地方」みたいな感じ。ホームは大阪(ホンネは京都)、いや、ボストンだ。名物料理はロブスター。お好み焼きみたいなものだな。

ゆでロブスター。@キャプテン・カルロス/グロスター

アメリカには、「あたたかくなってきたしキャンプ行こっか」という文化がある。まるで花見だ。ゲイ向けのキャンプもあり、ゲイキャンプと呼ばれてる。そんなこと日本語で言ったらまたうッとなるけど、わたしのアメリカではふつうだ。うッとなる世界設定は、6年くらい前の全国版アップデートで消えた。

ボストンの住宅街。

娘んちの犬。

初キャンプだった私は、彼氏の娘夫婦にキャンプセットを借りようとした。我々はなんでも貸し借りしあう。晩ご飯のつくりあいっことかも、しょっちゅうだ。娘夫婦は、キャンプセット、もちろん持ってた。彼女の物置部屋で、日本の学生部屋の冷蔵庫くらいあるボックスを渡してくれた。夏だから、もうね、と。

ボックスの中には、テント、マットレス、ランプ、イス、虫除け、なにもかもがあった。阪神大震災のあとの京都の自宅に常備されてる避難セットが、おあそびに思えるほど。アメリカの遊びに、かんぜんに負けている。あと無いのは冷蔵機能だけかと思ったら、クーラーボックスも別途で貸してくれた。隙がない。

〽︎ナイフ、ランプ、かばんにつめこんで、という情緒がない。キャンプするねんな? ちゃんとやりたいやろ? ほなこれ全部つかいよし。オーライ? という態度。「トラブルも旅の醍醐味」みたいな悠長な娯楽はもちこまない。座右の銘は「問題即解決」。まるで芸人の友近みたいなバイブス。私は彼女らを愛している。

なによりも延長コード

キャンプまでは、家から2時間のドライブ。ボストンはマサチューセッツ州にあって、キャンプは、その真上のニューハンプシャー州にある。アメリカの「州」は日本の「県」だけど、スタンスや規模は「国」にちかいと感じる。はるか昔の日本みたい。では時空まで超えていく気分で、いざニューハンプシャー国へ。

道中の景色。

キャンプの前の道。

「ジョーズハイダウェイ」。

木と紙でできた看板。

ニューハンプシャー国の旗。

「←オフィス」と言ってる。

オフィス。

車でキャンプに乗り込んでオフィスに横付けし、ホテルのようにチェックイン。ジョーの旦那-ハズバンド-が、いかにも慣れ飽きた、カラッとした対応をしてくれた。予約確認、ID確認、先払いでお会計。一泊2750円。コワーキングスペースひと月4万円〜なボストンからすると、別世界だ。またひとつ、ちがうアメリカを見つけた。

部屋番号が示された、キャンプの地図。

部屋…というか、空き地に番号が振り分けられている。アメリカの家みたい。電気は一部のエリアを除いてすべての部屋に通ってて、「だって無いとキャンプできないでしょ」という声が聞こえる。電気といっても、空き地の木にコンセントがぶら下がってるだけなんだけど。本当に必要なのは、延長コードだった。

我々の部屋。

床のテクスチャ。

テント建て(1/3)。

テント建て(2/3)。

テント建て(2/3)。その2。

テント完成。

なんとか電気は確保したが…。

いい延長コードが無いと、寝づらい。コードが届く範囲にしかテントを設置できないので、そこが傾いてたりゴツゴツしてたら、詰む。そういう意味では、我々は詰んでいた。「延長コードで体調をくずす」という洗礼を受けたのだった。キャンパーとしてのレベルが1/10から2/10に上がった気がして、ワクワクした。

ちなみに水もある。

BBQしない

火でなにか焼く時もあるが、それがメインアクティビティにはなってない。

ジョーズハイダウェイには、そもそも飲食物が売ってない。旦那に夕食のアドバイスを求めたら、「ワシントンにあるで」と言っていた。道中にとおったワシントン村のことだ。何か必要なら、随時外出して、すべてそこですませるらしい。村で唯一のレストラン「ジェネラルストア」で飲み食いしてね、ということだった。もちろん車で行く。車がないと、どこにも行けない(ここにも来れない)。

ジェネラルストア。

ジェネラルストアの雰囲気。

氷が売ってる。

プロパンガスも売ってる。

ガソリンスタンドも兼ねている様子。

レジの様子。

ジェネラルストアは「よろず屋」を意味する。ワシントン村のジェネラルストアは食堂もかねていて、田舎にしかないタイプらしい。名前もそのまんま「ジェネラルストア」。「食堂」と名乗る「食堂」みたいなことだ。とがってるわけではなく、ただただまっとうな食堂。スタンスがワンパンマンのサイタマだ。地域の晩ごはんをいっせいに請け負っているかのような繁盛ぶりで、キャンプの客もそこそこいた。

おばちゃんたちが、せっせと料理をこしらえてた。タバスコがふとい。

チーズバーガーをおもちかえり。ほんとにチーズと肉だけの、ハンバーガー。

自然のにおいを吸いこみながら食べると、不自然なくらい美味だった。祖な味。

ハンバーガーの記事いちらん

ムービーナイト

ムービーエリア。

火は、暖房としての機能だけをまっとうしてる。

夕食後は、キャンプのムービーエリアで映画を見た。ムービーエリアは、「スクリーン付きのリビングルーム」という雰囲気で、アメリカの家庭の娯楽が再現されていた。ウチがきもちぃことをかいたくするねん! という天真爛漫な態度。ここがスキー場でも、おんなじことをするんだろうな、という勢い。あつい。

家には、テレビとソファのリビングルームがなければいけない。なぜならそういうものだから。そういう精神がみえる。「まわりに合わせてじぶんを調整」じゃなくて「じぶんに合わせてまわりを調整」。ここが決定的にアメリカ。このキャンプ、と似てるかも。うッとなりかけるが、気を使わないし心地いい。

映画は、主要キャストが全員アジア人ということで話題になったアメリカ映画。「おれの彼氏はアジア人!」という声がスクリーン外から聞こえ、ハッとする。アメリカでは、自分の属性について外から通知がよく届く。声の主は、「ダーティサンタ」と名乗る、キャンピングカー持ちの常連だった。キャンパーレベルは6くらい。

「クレイジー・リッチ・エイジアンズ」という映画だった。

映画ボケしてて気づかなかったけど、テントに戻ると、暗かった。延長コードの時点でつまづいてた我々だから十分な明かりは確保できず、1時間が5分くらいに感じた(ガブ飲みしてた酒のせいにしておく)。ほかのキャンパーの家の明かりがこれみよがしに見えて、「キャンプは電気が命」という気づきが確信に変わる。

〽︎ウイスキーコークだけさ

家/キャンピングカー。ベーシックなライトアップ。

家/キャンピングカー。車体にブルーライト。

家/キャンピングカー。車体にエフェクトライト。

家/キャンピングカー。下に間接照明。

我々のテント。他のみんなは家に立てこもってネットフリックスなど見てたのに。

高級住宅街

キャンプとは、大自然にとけこむのではなく、いかに自分の文化を移植して開拓するか。マインクラフト的な楽しみかたなのかなと感じた。ジョーズハイダウェイには住みわけがあり、ちょっとお高くとまった地域が存在した。レベル6くらいのキャンパーたちが指をくわえて見つめる、「ザ・ハイツ」というエリアだ。

ザ・ハイツの領域をしめす標識。

ザ・ハイツは、レベル8以上の熟練キャンパーがキャンピングカーをおきっぱにしているネイバーフッド。テントなんてひとつもない。家を長期契約しているらしく、レベル6くらいのキャンパーたちに、空きを狙われてる様子だった。キャンプの本質は、マンション経営に近いのかもしれない。間違いなく土地が開発されている。

キャンプをつきつめると都市になる。ザ・ハイツがそう言ってる。住人らは、「テントはもう無理やわ〜」と、幸せそうに言う。ここにあるキャンピングカーは、キャンプもしなければ、走りもしない。行くとこまで行きついた感があり、どっしり腰をすえて往生する気でいる。悟りをひらいたキャンプの姿なのかもしれない。

日本の「バンライフ」とかとは、対極のユートピアを提示している。

ザ・ハイツは上級キャンパーの社交場。レベル2では、輪にはいりづらかった。

人間の音楽が、かんぜんに自然をかき消していた。

ザ・ハイツは繁華街でもあった。このキャンプで、山で、というか地域で一番、ホットな場所。「自由の国、アメリカ」とでたらめに国外で形容されるときの、「自由」の出どころを押さえた気がした。非日常をあじわうアウトドア・アクティビティなどない。都会の暮らしをいかに再現するか、というゲームが粛々と展開している。

USA! USA! とか、いまにも聞こえてきそうだった。

未開の土地に、おのれの文化を土壌ごと移植するタフネス。宮崎駿とかが来たら、怒ってすぐ帰りそうだ。でもこれがアメリカのキャンプ。

すっげ! ホタル!? と興奮したが、ディスコライトだった。

クリスマス

うってかわって、「メイン国」のキャンプ場。

べつのキャンプ場にも行った。ニューハンプシャー国より遠い、アメリカ最北端かつロブスターの名産地、メイン国にある。娘夫婦のより巨大なテントを買い、私はわたしのキャンパー道を走りだしていた。長めの延長コードもある。しかしまたもや、延長コードからひっかかる。くっそ、届かん。コンセントとの距離をあなどっていた。キャンプ場が業務用の延長コードを貸してくれて一件落着したけども。

我々の延長コードでは、どうあがいたって届かない距離にコンセントがあった。

こんなことって、ある。

でも中はかなりひろい。

天井も高め。

しまった、シュート! こんどはヒーターが無い。メイン国は寒いのに、カナダと国境を接してるのに、あと2つきでクリスマスがやってくるという季節なのに、暖房なしで寝るなんて!!! アメリカどころか北米ごとなめてるとしか思えない。家でヒーターを使ってるのにキャンプではいらないと、なぜ思えたのか。あまりにもさぶい考えで呆れてしまう。私はアメリカのことをぜんぜんわかってない。

学んでないわけじゃないけど、レベルはせいぜい3くらいか。

困った我々に、いまとなっては顔なじみのダーティサンタがヒーターを貸してくれた。あれっ!? ひさしぶり! ちょっと早めのクリスマスが、あっちから来た。

来るダーティサンタ。会場もついでにあたためた彼は、夜の一発芸大会で優勝した。

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