世界ごはんたべ記#9 京都のイスラエル料理屋「ファラフェルガーデン」

「世界ごはんたべ記」のせつめい

「世界ごはんたべ記」は、ライターのがぅちゃんによる外食の記録です。どんなお店で何を食べたか、どんなことを思ったか……などなど、じゆうに書いています。

海外ぐらしが長いので、異国のお店はひんぱんに登場します。とはいえ「世界」と名乗っている手前、母国のお店も発表していかねばなぁと思っています(……か?)。



前回の記事「#8 大阪のカレー屋「自由軒・難波本店」はこちら。「世界ごはんたべ記」の記事一覧はこちら

ファラフェルという名前

ファラフェルガーデンの外観。

京都で唯一のイスラエル料理屋「ファラフェルガーデン/Falafel Garden」の噂はかねてから聞いていた。知る人ぞ知るというか、日本ではマイナーであろうイスラエル料理*に興味のある人なら知っているであろう(多分)、日本でも数少ないイスラエル料理のお店だ。

「ファラフェルガーデン イスラエルカフェ&レストラン」とある。

「イスラエル料理」なんてものは無いのだけれど(これについては端折る)、「イスラエルの定番料理」は確実に存在する。そんなイスラエルの定番料理を、そのた中東料理(ときにインド料理など)とごっちゃにせず、ファラフェルガーデンは提供している。

イスラエルのファラフェルサンド。@Ratzon/テルアビブ(詳細記事

店名にもなっている「ファラフェル/Falafel」とは、ひらたく言えば「豆のコロッケ」のことで、イスラエルを代表するソウルフードだ。現地では子供も安心して食べられる最強の料理という感じで、イケアのカフェテリアでもファラフェルが売られている。

イケアのファラフェルサンド。5シェケル(150円)と激安。

ピタパンからファラフェルが覗いている。

タヒーニ(ゴマのソース)をドボドボにかけるスタイル。

ちなみにタヒーニはかけ放題だ。(左のマスタードもね)

「ファラフェルガーデン」という名前がイスラエル人にとってどんな響きとなるか」を日本人に伝えるべく店名をあえてい訳するならば、京都人にとっての「おたべ広場」とか、大阪人にとっての「たこやきパーク」とかになる気がする(イスラエルでそういう店名を見つけた気持ちを想像してほしい)。

そんな「おたべ広場」ならぬファラフェルガーデンは、京阪電車の始発駅「出町柳(でまちやなぎ)」から徒歩1分(160m)の距離にある。もうほんとうに、すぐそこ。つまりついでに、徒歩でそのまま世界遺産の下鴨神社に立ち寄ることもできる立地だ。観光客に人気のエリアといってよいと思う。

下鴨神社の楼門(ろうもん)。

イスラエルを見据えてるファラフェルガーデン

お店の外観。

出町柳から北にのびる高野川ぞい東側を北上すると、ファラフェルガーデンに到着する。京都の住宅っぽいたたずまいで、やけにシックになりがちな地中海料理屋の雰囲気はない。いちおうイスラエルは地中海に面しているので、地中海料理に含められることがある。でもパエリヤはイスラエルの定番料理ではないので、ファラフェルガーデンには上陸してない。ひと安心だ。

お店の外からメニューが拝めてありがたい。テイクアウトもやっている。

ファラフェルガーデンは確実に「イスラエル」を見据えていて、イスラエルで勝負しているのがわかる。レジ横にはイスラエルの食品も売られていて、現地のマジ定番おやつ「ビスリ」があった。これを見たとき、このお店の本気度を確信した。「タラタラしてんじゃねー」みたいな、ほんとに日本人しか知らないおやつが売られている海外のお店を想像してほしい。

玄関にメズーザーとハムサ(余談にて後述)。

イスラエルのスーパーから直送といった感じの食品。

ビスリのファラフェル味(イスラエルにはフレーバーが複数存在する)。

おやつ類の試食もできる。

バクラヴァなどの手作りスイーツも。

テーブルの雰囲気。

壁にはイスラエルの写真。

二階もある。

余談:メズーザーとハムサ(と地中海料理とイスラエル料理と…)

メズーザー。

「メズーザー/Mezuzah」はヘブライ語で「門柱」のような意味で、ユダヤ教徒の家の玄関に設置されている物体だ。アメリカの家にもよくついてるけれど、イスラエルでは任天堂直営店とかナイキとかの店舗でも見かける。「ハムサ/Hamsa」は手形のお守りのようなもので、家の中とか車内にぶらさがっていたりする。

ナイキのメズーザー。@テルアビブ

任天堂の直営店のメズーザー。@テルアビブ

エルサレムの酒場の、遊び心がきいたメズーザー。

市場で売られるハムサ。@カルメル市場/テルアビブ

地中海はヨーロッパ・北アフリカ・中東に囲まれていて広範囲。イスラエルを含む地中海沿岸の中東諸国の食文化は「レバント料理/Levantine cuisine」と呼ばれている。シリア、レバノン、イスラエルらへんのソウルフードは共通している。ファラフェルを食べて母国を思い出す人はイスラエル人だけではないと言っておきたい。

典型的なレバント料理。@ファットゥーシュ/ハイファ

でも、イスラエルのファラフェルはイスラエルの味がする。日本のカレーだって、家庭によってぜんぜん味が違ったりする。レバント料理はざっくりそんなな感じだ。ターメリックやガラムマサラを使うことがあるからカレーっぽい(=インドっぽい)みたいにも言われるけど、それもまた違う。

例えばそれは、醤油を使っている料理をすべて指して「中国料理と日本料理と韓国料理いっしょやな」と外国人が言うくらい、ちがう。でもまあそのような世界観だ。でもイスラエル料理がいちばん似てるのは、ギリシャ料理だと思う。名前が違うだけで、同じ料理とかがざらにある。

ギリシャの「ギリシャサラダ」。

イスラエルの「イスラエリ・サラダ」。(サラダの基本概念が同じ。)

そもそもイスラエルは東ヨーロッパのユダヤ人が1948年に建国した国だから、母国料理がまだ確立されてない(移民なのでルーツが海外料理になる)。だからイスラエルはまだ無いとされる。でもいちおう、東欧×中東×ユダヤ教×地中海の式で「イスラエル料理」のモデル回答はできる気がする。

「イスラエリ・ブレックファスト」は、イスラエル料理を最も端的に表す。

てゆうか、、序盤で端折ると宣言しておきながら、やはり説明してしまった。しょうがない、話をむりやり変えよう。ファラフェルガーデンの西に高野川がつづく感じ、西に地中海がつづくテルアビブの気配がした。

テルアビブのうみ。

京都の高野川。あ…うん、ぜんぜん違うな。

ファラフェルガーデンのメニュー

チキンカバブ、ファラフェル、フムス、ピタパン(ハーフ)。

ピタパンのサンドイッチをメインに、プレートメニュー、サイド、デザートetcと迷いにくいセレクトで、隙のない布陣といった印象をうけた。シュニッツェル、クスクス、フムス、ファラフェル、シャワルマサンド(チキンケバブサンド)etc…「これはイスラエル人が選んだな」という感じで、イスラエル人も安心感を抱くようなラインナップだと思う。

メニューは写真つきで理解しやすい。

ドリンクも充実していて、イスラエルビール(マカビー)、イスラエルワイン、カクテルなどある。ワインについてはふ〜んという感じかもしれないけれど、「イスラエルのワイン」は「日本の酒(Sake)」みたいなことだから、地酒のつもりで飲んでほしい。イエスキリストが水をワインに変えたりしたのが現在のイスラエルにあったりするほど、ワインはけっこう重要だ(ブドウは神聖な7食材のひとつ)。

イスラエルのワインについての説明。

どのメニューも、イスラエル料理を知らない日本人が読んでスッっと理解できるネーミングや説明になっていて、愛を感じた。だからチキンカバブのことを私みたいにイキって「シャワルマ」とか呼んでない(実際に、シャワルマとはまた違うオリジナルなかんじだった)。

ファラフェル

6こで420円。これぞファラフェル。完全にイスラエルの味がした。

イスラエルの一般的なファラフェルには、ひよこ豆、パクチー、パセリ、クミン、ニンニク、タマネギなど含まれる。形はいろいろあるけれど、アラブ料理屋ではないイスラエルのファラフェルはボール状になっていることがおおい。日本のミートボールに形状が似ている。メニューが「ファラフェルボール」という名前で納得した。そう、ボールなんだよなイスラエルのファラフェルは。

中は黄緑色。これこれ。

タヒーニ(ゴマのソース)とトマトのソースがかかっていた。トマトソースはチリ、ニンニク、オリーブオイルを含むイタリアメリカンなマリナラソースに近い味で、アジアメリカンのシラチャーソースにも似てる気がした。トマトのソースonファラフェルはイスラエルでは一般的ではない気もするけれど、ぜんぜんあり(イスラエル料理にセオリーなんて無いから、あっても不思議じゃないしね)。

フムス

506円。ひよこ豆とオリーブオイルとタヒーニがトッピングされているスタイル。

フムスはひよこ豆のペーストで、イスラエルではファラフェルに匹敵する最強ソウルフードといってよい。飲食店ではいつのまにかテーブルにおかれてたりするくらい定番食だ。ファラフェルガーデンのフムスはかなりあっさりしていた。いまのイスラエルではもうちょっとクリーミーなものが主流だと思う。ポテトサラダみたいな食感だった。味はやさしくて素材を感じる。

ピタパン(ハーフ)。150円。

ピタパンでフムスをすくって食べるのが一般的。

関連記事:イスラエルで最も有名なフムス屋!テルアビブの「アブハッサン」

チキンカバブ

820円(Mサイズ)。

イスラエルの屋台のケバブサンドの定番で、現地では「シャワルマ」と呼ばれることが一般的。シャワルマはトルコやドイツでいう「ドネルケバブ」のこと。余談だが、イスラエルでシャワルマをケバブというとちょっと怒られる。でもチキンカバブのほうがわかりやすいし結果オーライでいいと思う。

イスラエルのシャワルマ。@エイラート

というかそもそもシャワルマはあの焼き方を意味するらしいし、重ねた肉片を回転調理しながら刃物で縦に削ぎ落とす。ファラフェルガーデンはそうではなくて鶏肉をグリルしているっぽかったから、ほんとうにチキンカバブなんだとおもう。カバブはアラビア語で「火で焼く」という意味だ(とかそうじゃないとか)。

ちなみにこれがイスラエルのチキンシャワルマ。@マサダ/テルアビブ

こちらはイスラエルのチキンケバブ。@アブゴッシュ/アブゴッシュ

ファラフェルガーデンのチキンカバブはやさしくて、ターメリックとかガラムマサラらへんの味がほんのりした。「日本のケバブ」という感じでイスラエルを特に感じはしなかったけれど、なんの文句もなく美味しい。あと、盛り付けが逐一ていねいで、イスラエルでは体験できない類のクラフツマンシップが感じられた。

関連記事:イスラエルの定番ケバブ3種類と12品の解説

最もイスラエルを感じた部分

トイレにあった、イスラエルの国鳥「ヤツガシラ」の写真。(詳細

インテリアが全体的にイスラエルのカフェという感じで、現地の再現度が高い。とくにトイレがすごかった。ここだけ切り取ったら「イスラエルなう」とか騙せそうなレベルだ。イスラエルのカラオケで「梅田なう」ごっこをしたときくらい興奮した。このトイレを「エル・デコ(ELLE DECOR)」誌っぽく形容するならば、ボヘミアンでラスティック。そんなかんじだった。

貝のシャンデリア。山とか海とかの背景があってもおもしろそう。

アルメニアンっぽいタイル。

ファラフェルガーデンのモデルと推測できそうな雰囲気の、イスラエルの家。

イスラエルのカラオケ「PlugIn」の部屋。

ぶっちぎりの思い出

レジ横にて。

なにげに一番感動したのが、ファラフェルサンドの食品サンプルだった。ファラフェルについての感動は「ファラフェルの絵文字がアイフォンで使えるようになった」がピークだったのだけれど、それが見事に更新された。世界広しといえども、ファラフェルサンドの食品サンプルはここにしか無いと思う。すごいぞファラフェルガーデン!

Falafel Garden: Kyoto’s only Israeli restaurant – Sushi Sandwich

At Demachiyanagi Station (出町柳駅), one of the Kyoto-est stations, it’s a signboard of Falafel Garden that first welcomes locals and tourists. Being a landmark only second to a UNESCO World Heritage Site “Shimogamo Shrine (下鴨神社)” in the same neighborhood, Falafel Garden is one of the most famous Israeli restaurants in the Kinki region.

ファラフェルガーデンの住所:606-8205 京都府京都市左京区田中上柳町15-2

出演-おしながき-

ファラフェルガーデン/Falafel Garden
ファラフェル/420円
フムス/506円
ハーフピタ/150円
チキンカバブ(M)/820円

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