「海外キマグレごはん」の企画説明-おしながき-
「海外キマグレごはん」では、私が海外で食べたごはんを紹介します。日本国外で食べた自炊以外のごはんなら、なんでも紹介したいと思っています。ただし、何を「ごはん」とするかは、その日の気まぐれで決めようと思っています。
そしてこの企画、必ずしも「海外らしいごはん」ばかりではないです。「イスラエルのケバブ」の日もあれば「イスラエルのラーメン」の日もきっとあります。私はイスラエルに住んでいるので、イスラエルで食べた料理の発表は多くなる見込みです。
とはいえ、アメリカのハンバーガー、イタリアのピザ、クロアチアのクロマグロなど、できるだけ多くの国から多岐にわたる料理を紹介したいと考えています。何卒、よろしくおねがいいたします。
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前回の記事「#7 イスラエルのサシミサーモン」はこちら。「海外キマグレごはん」の記事一覧はこちら。
ユッケ
「サーモンタルタル」なんて、日本ではあまり聞かない名前だが、その概念は韓国料理の「ユッケ」と同じだ。ユッケは英語で「タルタルステーキ/Steak Tartar」と呼ばれている。つまり「サーモンタルタル」とは、「生サーモンのユッケ」みたいなことだ。
イスラエルで「タルタル」は前菜(オードブル)という扱いらしい。この国はヨーロッパ先進国の食のセンスを(概ね)トレースしているので「タルタル」がメニューに登場するのも珍しくない。また、「タルタルソース/ Tartar Sauce」は、イスラエルでも、日本と同じくらい一般的だ。
高級なんだゾ
今回の「サーモンタルタル」は、イスラエル最南端のリゾートタウン「エイラート」にある、高級風レストランで食べた。「高級なんだゾ」という型を徹底してプレゼンテーションしたような、私が通わないタイプの、利口なレストランだった。
エイラートの街並み。
高級風レストラン「フィフス・アベニュー」。
「セックス・アンド・ザ・シティ」みがある。
イスラエルの飲食店では、「日本料理をメニューに取り入れて問答無用でおしゃれにさす」という現象がまま見られる。日本で例えるならば、「ペペロンチーノ」を「アーリオオーリオ」と呼ぶ、のようなことだ。しかし、名前がもつ魂-コンセプト-まで貫いているケースは稀だ。
メニューのスクリーンに表示された「サーモンタルタル」。
フィフスアベニューの「サーモンタルタル」は、典型的なおしゃれメニューだった。ここぞとばかりに贅沢にアジアを取り入れていて、「おしゃれアジア御膳」とさえ言えそうだった。そんなサーモンタルタルの内容をばかまじめに直訳すると、以下の通りだ。
サーモンタルタルの内容:ポンゾー、ジャパニーズラディッシュ、トウガラシ、グリーンタルタル、パーニープーリー、ガカモレ、ユズクリーム、チャイニーズピーカンナッツ。
これがサーモンタルタル。
野暮を突き詰めたら、
この料理をひとことで説明すると「サーモンのポン酢あえ」と言える。かなり美味しかった。まっ黄色のタクアンは現地のスーパーにも売られていて、典型的な「日本の食べ物」として認識されている(と思う)。国内の人気ラーメン店「Hiro」のイチオシメニューにも登場したりする。
「Hiro」の「コチュジャンラーメン」の、タクアン。
インドのおやつ「パーニープーリー」も、まま見かける。「なんかかわいいゾ」と思わせることが存在理由に見えなくもない、なんて言えば邪推と見なされるけど、やはりその外見がモノを言う。イスラエルの「アミューズブッシュ」のおしゃれ番長だ。
インド出身のおしゃれ番長。
緑のソースはアボカドのソース「ガカモレ」だ。アボカドはイスラエルの定番食材だし、ガカモレもアメリカくらい一般的に食される。「アボカド×サーモン」は、イスラエルの定番料理(とたまに言われる)の「スシサンドイッチ」にも採用される、鉄板の組み合わせだ。
(揚げ)スシサンドイッチ。アボカドサーモン。
黄色の「ユズ・クリーム」は嬉しかった。なぜなら柚子製品は超高級だからだ。現地のスーパーにも売っているが、(私の知る限り)日本製品しか見たことがない。恐らく日本の調味料の筆頭と見なされている。「柚子胡椒」「柚子酒」「柚子酢」は、今のところ存在が確認されている(自分調べ)。
スーパーの魚売り場で売られていた「柚子の粋」。300ml/5,970円。
そんなこんなでオールスター大集合だったサーモンタルタル。サーモンとポン酢がそもそも不味くないので、不味くなりようがない。でも、文句なしの料理だからこそ、正体が見たくなった。「なんでこうなったんだろう?」「どうしてこれが必要なんだろう?」 そういう野暮を突き詰めたら、「だっておしゃれに見せたいから」が見え隠れした。
甘辛い醤油味のステーキ。
甘辛い醤油味のトルテリーニ。
黄金のブルーベリーが美しいデザート盛り。
というか、「おしゃれに見えることが至上命題」と仮定して考えた場合、原因-始まりの思想-までの逆算が最速で済んだ。それだけの話だ。「ヤツはカッコつけたい」と決めつけたとき、バチっと何かがキマった。なんかどっか、上のほうで、「決して下品ではないがスノッブなカマ」をかけられてる気がした。
オナカイッパイ
誤解がないように言っておきたいのだけれど、料理はバツグンに美味しかった。店員もいい人だった。むしろまた食べたいくらいだ。
けれどなぜか、すぐオナカイッパイになってしまった。まっ黄色のタクアンのスライスに「ムッ」となってしまったからかもしれない(だから注文したのだけれど)。もしこのタクアンが白だったら、もしパーニープーリーがぼんち揚げとかだったら、「オッ」と話が変わっていた気もする。
イスラエルのスーパーで売られるタクアン。
ところで、このレストランの名前になっている「フィフス・アベニュー/Fifth Avenue」は、ニューヨークに実在する、有名な通りの名前だ。「世界で最もエレガントな通り」のように言われている。
本物のFifth Avenue。
アップルストア・Fifth Avenue店。
Fifth Avenueにそびえるトランプタワー。
けれどここは、エイラートの「ソプロン通り/שופרון」だったはずなので、猜疑心の強すぎた私は、初めからなにかといろいろ食えてなかった。
エジプトに続くエイラートの道。