「世界ごはんたべ記」の講釈
「世界ごはんたべ記」は、ライターのがぅちゃんの外食の記録です。どこのお店でなにを食べたかを報告しています。「世界」と名乗っている手前、異国のお店も母国のお店も登場します。
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前回のエピソード「#82 東京のもんじゃ焼き屋/もんじゃ・蔵」はこちらです。「世界ごはんたべ記」の記事一覧はこちらです。
イスラエル料理について
イスラエルの料理本の表紙。(写真の料理は名物のファラフェルサンド)
「イスラエル」は中東地域の地中海沿岸にある国だ。トルコとかギリシャとかエジプトとかが近い。料理も似ている。でも「イスラエル料理」は無い。
…というのを、私は一週間に2回は(独り言ふくめ)説明していると思う。「イスラエルは移民の国なので、母国料理が海外料理になる」といった内容だ。
イスラエルの定番料理
私はイスラエルに住んでいたことがあり、現地の料理を美味しいと感じた人間なので、イスラエルの料理について考える機会は日本人の割には多いと思う。
「イスラエル料理」は「イスラエルの定番料理」で間違いない気がする。中東料理、アラブ料理、地中海料理、東欧料理、西洋料理、ユダヤ料理、あたり全てを含む。
ロシアの魚のピクルスとアラブのひよこ豆のフムスが同じ皿に盛られてても別におかしくないのがイスラエル料理だ。
フムスとファラフェル
フムス(左)とファラフェル(右)。
イスラエル料理のなかでも、ひよこ豆のディップ「フムス」と、ひよこ豆のコロッケ「ファラフェル」は、「イスラエルの定番料理」として二大巨頭といえる。
これら2つは「イスラエル料理」として語られることが多いが、「中東料理」としても定番だ。これらを食べて母国を思い出すのは、イスラエル人だけではない。
このブログにもイスラエルの料理に関する記事はたくさんあるので、もし興味があれば読んでいただければ嬉しい。
タイームとは
タイーム・一号店の外観。
つい説明が長くなるイスラエル料理(=イスラエルの定番料理/念のため)だけど、そんなイスラエル料理のお店としてたぶん日本一有名なのが「タイーム/Ta-im/טעים」だ。「タイーム」は、イスラエルの公用語であるヘブライ語で「おいしい」を意味する。
タイームは東京に2店舗あり、一号店は東京の「恵比寿駅」と「広尾駅」の中間地点、二号店は「東京駅」の前にある。シュッとしたカフェのような二号店に対し、一号店はイイかんじの食堂のような佇まい。今回は一号店を訪れた。
タイーム・一号店の前の通り。
タイーム・一号店の雰囲気
店内の様子。
タイームはこじんまりしている。その間取りに家庭料理屋感がある。カウンターに囲まれた厨房に大将がいて、入店したときに「らっしゃィ!」のような声をかけてくれた。人を元気にさすタイプの元気だ。
音楽はアメリカのロックンロール。エルビス・プレスリーとかだった。大将の声みたいな歌声も聞こえたので、きっと大将のお気に入りBGMなのだろう(私はカウンターから離れた窓際の席に座っていたので、視覚では確認できなかった)。
窓際の席。イスラエルのビール「マカビー」の瓶が並んでいる。
壁にかかっていたイスラエルのお守り「ハムサ」。
アルメニア陶器。
イスラエルのビール瓶、ヘブライ語のらくがき、ハムサ、ラクダの置物、アルメニア陶器…。目に映るなにもかもが「イスラエル」を主張している。どっかの中東料理屋ではなくて、紛れもなくイスラエル料理屋だった。
タイーム・一号店のメニュー
ランチプレート。(1/2)
ランチプレート。(2/2)
お昼時だったので、メニューはランチプレートが充実していた。日本にあるイスラエル料理屋のランチプレートはメインディッシュをくまなく網羅できる内容であることが多いので、この時点で私の好みだった。
「ファラフェル・プレート」「チキンシュニッツェル・プレート」「チキンシャワルマ・プレート」などあった。日本食でむりやり例えると、「米と味噌汁の定食」「米と味噌汁の定食+唐揚げ」「米と味噌汁の定食+焼鳥」みたいなことだ。
「ピタサンド」のメニュー。
イスラエルでは注文しなくても付いてくるレベルで定番の「ピタパン」を用いた「ピタサンド」も充実している。「ファラフェル・サンド」は、イスラエルではイケアでも売っているほどの定番だ。
イスラエルのイケアのファラフェルサンド。
ファラフェル・プレート
タイーム・一号店のファラフェル・プレート。1680円。
ひよこ豆のコロッケ「ファラフェル」と、ひよこ豆のペースト「フムス」が同時に食べられる「ファラフェル・プレート」を注文した。「ファラフェル」「フムス」「ピタパン」「サラダ」「スープ」「ポテト」が含まれる。隙が無い。
いい感じのポテト。
ターメリックやカボチャのような風味がするスープ。かなり美味しい。
サラダからして
レタス、紫キャベツ、ニンジンといった構成が、イスラエルのサラダという感じだ。既視感がある。例えば大根やワカメを用いたサラダにはどうしたって日本人のセンスが滲むように、「イスラエルの人が作ったサラダ」というオーラを放っていた。
イスラエルでは珍しくないハーブの「ディル」が含まれていて香ばしいし、というか、イスラエルのそのへんのお店よりは相当に手がこんでいると思う。サラダからして、イスラエル料理として美味しかった。
ファラフェル
完全にイスラエルのファラフェルだった。美味しい。「ファラフェルの味*」が、強めで素敵だ(お店によってはファラフェルの味がしない?こともある)。食感は、ドライよりはねっとりめで(ねっとりとはまた違う)、食べ応えがある。フレッシュだ。
*お店によって差はあるが、イスラエルのファラフェルには一般的に、ひよこ豆、コリアンダー、クミン、イタリアンパセリ、タマネギ、ニンニクなどが含まれる。これらが混ざり合って油であげられた風味がファラフェルの味。
ピタパンに(プレートの具材を全て)挟んで、ファラフェルサンドにできる。
フムス
フムスはひよこ豆のペーストで、一般的な材料は「ひよこ豆」「ニンニク」「レモン」「水」「タヒーニ(中東の練りごま)」など。味は、イスラエル国内でも、お店によって全然違ったりする(日本の各家庭の味噌汁くらい違う)。
タイームのフムスは、人が作ったフムスという味がした。スーパーとかで売られてるフムスとは別物だ。多分イスラエル人が食べても「あ、これは店の味やな」となると思う。タヒーニの風味と粘度が強めで好みだった。レモンとニンニクはひかえめ。
調味料
なにげに調味料もかなり美味しかった。おそらく自家製だと思う。左は「ハリッサ」ようでもある、酸味が強くて甘くないチリソース。右は、「スクッグ」のようでもある、コリアンダーのチリソース。私はファラフェルサンドに塗って優勝した。
大将
サービスのミントティー。
大将はフレンドリーで、お客さんと英語や日本語でおしゃべりしていた。フレンドリーといってもイスラエルの市場などでありがちな「マイフレンド!」と一方的に押しかけてくるようなことは断じてなく、距離感などを大切にする雰囲気だった。
帰り際、大将が「Where are you from!(?というトーンではないのが良い)」と英語で話しかけてくれた。人間に関心がある目でコミュニケーションしてはった。私は、「京都出身で、テルアビブに住んでいた」という旨を伝えた。
とくに何か話したわけではないが、軽く話しこんだような感覚だった。大将の英語がイスラエル(前)首相のビビくらい流暢だったのと、大将含め、空間にLOVEが充満していたのが原因だろう。
江戸っこ顔負けにシック。
今回のおしながき
タイーム・一号店(恵比寿・広尾)/Ta-im
ファラフェル・プレート/1680円
タイーム・一号店のHP
タイーム・一号店の住所:東京都渋谷区恵比寿1丁目29−16