世界ごはんたべ記#81 東京のどじょう料理屋「駒形どぜう・浅草本店」

「世界ごはんたべ記」の講釈

「世界ごはんたべ記」は、ライターのがぅちゃんの外食の記録です。何のお店で何を食べたかを報告しています。「世界」と名乗っている手前、異国のお店も母国のお店も登場します。



前回のエピソード「#80 東京の深川めし専門店/深川宿・本店」はこちらです。「世界ごはんたべ記」の記事一覧はこちらです

「どじょう料理」について

どぜう鍋。

どじょうとは、あの魚のことだ。小さいウナギのようなやつ。川の浅瀬で網を使って砂ごとすくえば、たまに紛れている。すくなくとも私は、そうやってどじょうと触れ合った記憶がある。当時の私はどじょうを知らずに川で遊んでいて、いざ砂すくいをしたときに、どじょうが紛れていて恐怖を感じた。

そんなどじょうの料理の代表格(というか代名詞)のようになっているのが「どじょう鍋」だ。「どぜう鍋」という、ふぜいのある名称で親しまれている。どぜう鍋には主に3つあるらしい。どじょうを丸ごと入れた「丸鍋」。どじょうとごぼうのミックスの「ぬき鍋」。ミックスを卵とじにした「柳川鍋」。

どじょう(料理)の世界では、「どじょう料理=どぜう鍋=丸鍋」となっている様子。「どじょう料理」は「どぜう鍋」を指し、「どぜう鍋」は「丸鍋」を指すようだ。この関係性、「イスラエル料理=中東料理=フムス」にも遠からず近からずだ(いや遠いだろ)。

駒形どぜう・浅草本店とは

「駒形どぜう・浅草本店」の外観。

そんなどじょう料理の代表格である「どぜう鍋」を主力商品として提供しているのが、「駒形どぜう・浅草本店」だ。というか、どぜう鍋だけでなく「どぜう」という言葉自体を生んだのも、このお店だと言われている。駒形どぜう・浅草本店は、1801年創業の老舗だ。江戸時代のグルメガイド本「江戸名物酒飯手引草」にも記載されているらしい。

駒形どぜう・浅草本店は、浅草駅からすぐの「江戸通り」に面している。

駒形どぜう・浅草本店の雰囲気

店内の雰囲気。

店内から、ちょっとした庭も見えている。

「のれんをくぐれば、江戸の味わい。」が、お店のスローガン。ただ私の場合、のれんをくぐった直後では、まだ味覚までセンセーションが到達しなかった。でも、うどん屋のような香りと、歴史による風情を味わうことならできた。床に直接に座り込むタイプの座席(いわゆる入れ込み座敷)が目の前に展開していて、すこしひるむ。私はあぐらや正座での食事が苦手だ。

店内で待ち構えていた江戸が強すぎて平成生まれの私は入店即KOされかけたが、テーブル席があったのも見えた。「仲居さん」の格好をした女子大生らしき店員さんにお願いしたら座らせてもらえたので、ひと安心。店員さんは「ぜんぜんOK」という感じだったので私の緊張感は緩和された。店内に流れている時代は確実に令和だ。でも音楽は流れておらず、換気扇や調理の音、あとはおしゃべりの声が聞こえていた。

私が利用したテーブル。

駒形どぜう・浅草本店のメニュー

おしながき。

「おしながき」の内容は、「どぜう」「お食事」「お料理」「定食」に分類されている。「どぜう」の単品アイテムである「どぜうなべ」と「柳川なべ」が目立っていて、それらは定食にもできるようだった。「くじらなべ」をはじめとするくじら系アイテムも充実しており、「どぜうとくじらの店」とか言われても納得できそうな状態だった。

どぜうなべ

どぜうなべ。2050円。

どじょうを食う気で来ていたのに、意外にも充実していたくじらのラインナップに心が揺らぐも、「迷ったらてっぺんのアイテム*」の法則が発動して「どぜうなべ」にした。

*「迷ったらてっぺんのアイテム」とは、「メニューのいちばん最初に記載されているアイテムは推しであることが多いので、迷ったらそれにしておくと後悔が少ない」という法則だ。なお、「いちばん最初」の厳密な位置は、メニューの物理的レイアウトによって変わる(右上の角、左上の角etc)。てっぺんはたいていテッパンだ。

どぜうなべには、追加用の割下と薬味のネギ以外、なにもついてこない(だから定食があったのかと、ふに落ちる)。KETO(低炭水化物ダイエット)してる人には嬉しいと思うし、アメリカンスタンダードな料理かもしれない(ちがう)。

追加用の割下と、ネギ。

どぜう

鍋の底は浅い。

どぜうなべの鍋にはどじょうが12匹ほど寝かされていた。どじょうは下ごしらえがすんでいて、すでに火が通ったものだと店員さんが説明してくれた。生きたどじょうを酒で溺れさせ、味噌風味のダシで煮て、それを割下の鍋に入れる、というフローで完成した料理らしい。

どぜうなべのどじょう。

すでに相当な手数を加えらてきたであろうどじょうは「かろうじて形状を保っている」といった状態で、肉は柔らかいという次元を通り超していた。箸でぎりぎり捕獲できるものの、噛むとプリンのような食感の奥に骨が現れる。不思議な食感だ。

骨の食感は(もしこれがハンバーグとかを食べている最中だったら)不快と感じるレベルだけど、どぜうなべには必要不可欠な気がした。骨がなければ、どじょうが原型を留めてなかった気もするし、プリンを食べていると勘違いした可能性もある(嘘つけ)。

もんじゃ焼きかもしれない

どじょうを食べるにつれて生まれた空き地に、割下やネギを投入していく。後半は液体の割合が増えてどじょうが潰れたりするので、「どじょうペーストにネギとダシを混ぜた料理」のようになる。箸で少しずつツツいていると、もんじゃ焼きのように思えてきた。

鍋の空き地。

割下で空き地を満たす。

煮えてくる。

どじょうの味は、「これがどじょう!」というほどには、明らかでなかった。よってネガティブな臭みとも無縁だった。もしかしたらどぜうなべは、「どじょうを楽しむ料理ではないのかもしれない。あと、なにげに山椒がかなり美味しくて、(舌が)シビれた。

このタイミングでつついたときが、一番おいしかった。

Komakata Dojo, Tokyo: THE loach specialty restaurant – Sushi Sandwich

Komakata Dojo’s founder Sukeshichi Echigoya (越後屋助七) is said to have invented dojo nabe (dozeu nabe / どぜう鍋 / dojo loach hot pot) in the early 1800s at Komakata Dojo (Komakata Dozeu / 駒形どぜう). Here’s what the original dojo nabe looks like at the first location of Komakata Dojo Asakusa (駒形どぜう 浅草本店) in Tokyo.

今回のおしながき

駒形どぜう・浅草本店
どぜうなべ/2050円

駒形どぜう・浅草本店のHP

駒形どぜう・浅草本店の住所:東京都台東区駒形1丁目7−12

次のエピソード「#82 東京のもんじゃ焼き屋/もんじゃ・蔵」