「海外キマグレごはん」の企画説明-おしながき-
「海外キマグレごはん」では、私が海外で食べたごはんを紹介します。日本国外で食べた自炊以外のごはんなら、なんでも紹介したいと思っています。ただし、何を「ごはん」とするかは、その日の気まぐれで決めようと思っています。
そしてこの企画、必ずしも「海外らしいごはん」ばかりではないです。「イスラエルのケバブ」の日もあれば「イスラエルのラーメン」の日もきっとあります。私はイスラエルに住んでいるので、イスラエルで食べた料理の発表は多くなる見込みです。
とはいえ、アメリカのハンバーガー、イタリアのピザ、クロアチアのクロマグロなど、できるだけ多くの国から多岐にわたる料理を紹介したいと考えています。何卒、よろしくおねがいいたします。
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なんの変哲もない
イスラエルのとあるパーキングエリアにあるイタリアンレストランのチェーン店「Fiori」で、なんとなく注文したカルボナーラ。私が知っている一般的なスパゲッティよりは中華麺に近いような麺だったことを除けば、なんの変哲もない一品だ。
ベーコンとチーズとクリームが和えられていて、ローマ人ばりにカルボナーラの定義を突き詰めようとでもしない限り、誰もが「カルボナーラ!」と頷ける味に違いなかった。68シェケル/2,040円という価格に目をつむれば(イスラエルは食費が高い)、日本でも万人に受け入れられるだろう。
カルボナーラのテクスチャ。
「ふ〜ん、カルボナーラか」と思うかもしれない。でもこれはイスラエルでは、ちょっと珍しいのだ。そしてそれは、ユダヤ教の食の戒律に関連している。
玄関で靴を脱ぐ文化が淘汰された家
イスラエルは中東にある国で、人口の約7割がJewish(ユダヤ人or/andユダヤ教徒)といわれている。その半数ほどがユダヤ教を信仰/実践しているとされ、彼らが食べるものはユダヤ教の食のルール「カシュルート」によって定められている。肉や乳製品はカシュルートで「コーシャ」と認定されなければいけない。これはイスラム教のハラールにも似ていて、ユダヤ教でも同じく豚肉はNGだ。
カシュルートでは、肉と乳製品を混ぜてもいけない。でもこのカルボナーラには、あの豚肉がチーズやクリームと濃厚接触している。敬虔なユダヤ教徒にとっては、見知らぬ病人がマスクもノックもせずに自宅に押し入ってくるようなものだろう(と勝手に想像する)。
コーシャではない飲食店は実は多いのだが、メニューは公用語のヘブライ語と英語のバイリンガルが基本だ。しかしこのお店は違った。メニューは完全にヘブライ語オンリー。がっつり自国民向けだ。にもかかわらずコーシャを完全に無視しているところが目新しかった。
それはまるで、日本人しか住んでいないにもかかわらず玄関で靴を脱ぐ文化が淘汰された家のような(どんな家だ)、サーリアルな感覚だった。日本のテレビ番組「テラスハウス」でイタリア人漫画家のデュラト・ジュゼッペがシェアハウスに土足で入居してきたシーンが脳内をよぎった(冷静に考えるとあまり関係がない話だが)。
Not コーシャ(笑)
そんなこんなで、コーシャと明言していないイスラエルのレストランでは、料理の注文の際に「食材アレOK?コレNG?」とあれこれ軽い問答をするのが(私にとっては)珍しくない。肉や乳製品を含む可能性があるメニューを注文するときは、「肉と乳製品(チーズ等)どんどん混ぜてください」の意で「Is this コーシャ?」とウェイターに聞くことがある。
この店で私がそれを聞いたとき、そういえばウェイターはこう言っていた。「Not コーシャ(笑)」と。