海外キマグレごはん#5 ギリシャのギリシャサラダ

「海外キマグレごはん」の企画説明-おしながき-

「海外キマグレごはん」では、私が海外で食べたごはんを紹介します。日本国外で食べた自炊以外のごはんなら、なんでも紹介したいと思っています。ただし、何を「ごはん」とするかは、その日の気まぐれで決めようと思っています。

そしてこの企画、必ずしも「海外らしいごはん」ばかりではないです。「イスラエルのケバブ」の日もあれば「イスラエルのラーメン」の日もきっとあります。私はイスラエルに住んでいるので、イスラエルで食べた料理の発表は多くなる見込みです。

とはいえ、アメリカのハンバーガー、イタリアのピザ、クロアチアのクロマグロなど、できるだけ多くの国から多岐にわたる料理を紹介したいと考えています。何卒、よろしくおねがいいたします。



前回の記事「#4 アメリカのカツ丼」はこちら。「海外キマグレごはん」の記事一覧はこちら

ギリシャサラダ

ギリシャ料理にはどんなメニューがあるの? と聞かれたら、名前からしてそのまんまの「ギリシャサラダ」が真っ先に頭に思い浮かぶ。ギリシャではもちろん、アメリカやヨーロッパでもサラダの定番として知られている(はず)。英語では「Greek Salad/グリークサラダ」と呼ばれている。

典型的なギリシャサラダ。ギリシャの首都・アテネのホテルで食べた。

アテネのホテル。

アテネの街並み。

アテネの路上。

アテネの交通。

アメリカやヨーロッパでの「ギリシャサラダ」の認知度は、日本の居酒屋にたまにある「梅水晶」よりは高いと思う。「シーザーサラダ」と同等の存在感があるし、そもそも、ギリシャサラダを「ギリシャ料理」とわざわざ意識して食べる人はあまりいないと思う。それくらい、ギリシャサラダは一般的なメニューと言える。

作り方が簡単なのも、ギリシャサラダがポピュラーな理由の一つだと思う。おそらく、どこの国でも作れる。一般的なギリシャサラダに(ほぼ必ず)含まれる材料は以下の通り。

トマト
キュウリ
紫玉ねぎ
フェタチーズ
オリーブオイル
オレガノ

ギリシャサラダの一般的な解釈は「トマト、キュウリ、紫玉ねぎ、フェタチーズ、オレガノがオリーブオイルで和えられた野菜料理」といったところだろうか。フェタチーズが大きな長方形のフォルムを保ったまま野菜の上に乗っていると、本場感が強まるとみた。含まれる材料は、上の表を基準にしつつもバリエーションが存在し、ピーマン類、オリーブの実、ケイパーなども(度々)加わるようだ。

ギリシャサラダその2。アテネのレストラン「SCHOLARHIO」にて。

コリアーティキ

その名前がギリシャを全力でレペゼンしているため、あたかもギリシャが世界に誇っているかのようなギリシャサラダだが、私には素朴な疑問があった。「現地のギリシャ人も、これをギリシャサラダと呼ぶのだろうか?」と。

世界的に認知度が高い食品の名前は、発祥国では違う意味をもっていたりする。例えば日本の「酒-Sake-」がそうだ。日本語で「酒」は「アルコール全般」を意味するが、英語で「Sake」 は「日本酒」を指す。仮に外国人観光客が日本のコンビニで「ウェアズ・サキ?-Where’s Sake?-」と聞いた場合、それは「お酒どこですか?」ではなく、「日本酒どこですか?」である。

ところで、「サキ」はギリシャ人の男性の名前でもある。アルファベットでは「Sakis」「Saki」と綴る。私が愛してやまないアメリカのテレビ番組「キッチン・ナイトメアズ/Kitchen Nightmares」に登場したギリシャ人オーナーも「サキ」という名前だった。

倒産寸前のサキが「ビビってない」と言う名シーン。

「キッチン・ナイトメアズ」はたいへん面白い。とにかくボロカス言いまくることで人気の英国人シェフ「ゴードン・ラムゼイ」が、経営不振のとんでもレストラン*を救う、というテイの番組だ。これを見ると、飲食店のマネージメントにおける典型的トラブルが学べた気になるし、ゴードン・ラムゼイ自体がすでに面白いので、コメディ番組としても楽しめる。ただし面白すぎる副作用として、見るとストレスが溜まる。

(*信じられないような状況になってしまっているレストラン)

このストレスに耐えられるのなら、イギリスのテレビ番組「Can’t Pay? We’ll Take it Away!」を見るのもよい。国の借金取り立て屋(High Court enforcement officer)が問答無用でカネを回収していく番組だ。借金を返済する側は、嘆いたり、ゴネたり、誤魔化したり、とんでもない反撃を(度々)してくる。面白すぎて、見ると心底ゲンナリするからおすすめしない。見る人によっては、移民の印象が悪くなりかねない番組だ。

Can’t Pay? We’ll Take it Away!(違訳:払えないなら奪っていく)

さて、完全に話が脱線したことを認める前に、ギリシャサラダに話を戻そう。私が気になったのは「ギリシャサラダを、ギリシャ人は何て呼んでいるの?」ということだった。

ギリシャ人の友人に英語で質問したら、「Choriatiki」と、アルファベットの一言で返ってきた。私が読めるように丁寧にタイプしてくれたらしい。そこですかさず「ギリシャ語でどう書くの?」と質問すると、「χωριάτικη」と返ってきた。「コリアーティキ」。どうやら彼らはそう呼ぶらしい。ウィキペディアのギリシャサラダのページ(ギリシャ語表記)は「コリアーティキ・サラータ(発音)」となっていた。「サラータ」はサラダを意味する。

つまり、ギリシャ人はギリシャサラダを、「コリアーティキ」もしくは「コリアーティキのサラダ」と呼ぶということだ。

「コリアーティキのサラダ/Χωριάτικη σαλάτα」というタイトルの動画。

「びっくりドンキー」のインテリアの雰囲気

コリアーティキは英語にすると「Rustic」で、「素朴な/無骨な/田舎の/シンプルな」といった意味がある。つまりギリシャサラダは(あくまでも英訳に頼るならば)、「素朴なサラダ」「田舎風サラダ」、なんだったら「田舎風」と、本場で呼ばれているということだ。ちなみに「Rustic」を表している例としては、ハンバーグレストランの「びっくりドンキー」のインテリアの雰囲気がそうだ。

ギリシャサラダ改め、コリアーティキ改め、田舎風。本当にギリシャ語で「田舎風」というニュアンスなのかどうかは正直わからないが、兎にも角にも、ギリシャサラダは「素朴な野菜料理」ということだろう。そんなギリシャサラダは、ギリシャや田舎に行かずとも、欧米の都会のレストランで食べられる。

今度アメリカとかに行った時、調子にのって「コリアーティキください」とか言ってみようと思う。

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