海外キマグレごはん#6 アイルランドのゴルゴンゾーラサンドイッチ

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「海外キマグレごはん」の企画説明-おしながき-

「海外キマグレごはん」では、私が海外で食べたごはんを紹介します。日本国外で食べた自炊以外のごはんなら、なんでも紹介したいと思っています。ただし、何を「ごはん」とするかは、その日の気まぐれで決めようと思っています。

そしてこの企画、必ずしも「海外らしいごはん」ばかりではないです。「イスラエルのケバブ」の日もあれば「イスラエルのラーメン」の日もきっとあります。私はイスラエルに住んでいるので、イスラエルで食べた料理の発表は多くなる見込みです。

とはいえ、アメリカのハンバーガー、イタリアのピザ、クロアチアのクロマグロなど、できるだけ多くの国から多岐にわたる料理を紹介したいと考えています。何卒、よろしくおねがいいたします。



前回の記事「#5 ギリシャのギリシャサラダ」はこちら。「海外キマグレごはん」の記事一覧はこちら

ちょっとややこしい。

今回の「ゴルゴンゾーラサンドイッチ」はアイルランドの名物料理と言えるが、定番料理ではない。厳密に言うと、アイルランドではなく、その首都「ダブリン」の名物料理だ。ちょっとややこしい。だからつまり、アイルランドの名物料理ではない(もっとややこしい)。

ダブリンのマクドナルド(写真右)。

ダブリンのサブウェイ。

 ダブリンの観光バス。

ダブリンのポスト。

ダブリンのソフトクリーム。

ゴルゴンゾーラサンドイッチは、いわく付き(?)の料理だ。なぜならそれは、アイルランドの「現地の特産品」ではなく、現地文化に関する「〇〇ゆかりの料理」だからである。トリッキーなのだ。

「ゴルゴンゾーラ」と「ソーダブレッド」

何のゆかりかを説明する前に、ゴルゴンゾーラサンドイッチのナリカタチについて整理したい。これを一文でまとめると「パンの一種である【ソーダブレッド】で、ブルーチーズの一種である【ゴルゴンゾーラ】を挟む、サンドイッチ」となる。(というか、そうなっていた)。

まずは簡単に、「ゴルゴンゾーラ」と「ソーダブレッド」について理解していきたい。

ゴルゴンゾーラはイタリアのチーズで、「世界三大ブルーチーズの一つ」と言われている。この時点で、すでにアイルランドと関係がない。「ゴルゴンゾーラ」を名乗るためには条件があり、イタリアの特定の地域で生産されなければならない。

そんなイタリアのゴルゴンゾーラに対し、ソーダブレッドはアイルランドの定番パンで、同国では主食級の食べ物だ。ダブリン旅行中、訪れたほとんどの飲食店で登場した。現地では言わずもがなの市民権を得ていて、日本の「白米」くらいのポジションだったように思う。

スープについてきたソーダブレッド。

ソーダブレッドは「甘くないスポンジケーキ」のようなパンだ。モチモチよりはボロボロで、独特の食感だった。パンの種類としては、マフィンとかスコーンを含む「クイックブレッド」の仲間とされる。「イースト菌や卵を使わずに、膨張剤を使って作るパン」をそう呼ぶらしい。

ダブリンのおやつコーナーを席巻するクイックブレッドたち。

あのバアで食べたあのオニギリ*

では本題に入る。ゴルゴンゾーラサンドイッチは、なぜ名物か? 理由は単純、アイルランドを代表する小説家「ジェイムズ・ジョイス」の代表作「ユリシーズ」に登場するからだ。彼は英語圏最強の小説家の一人で、世界的に有名だ。アイルランド人にとって「ジェイムズのユリシーズ」は、日本人にとっての「太宰の人間失格」くらい、ピンとくるコンテンツらしい。

そんな「ユリシーズ」の主人公が、ダブリンのパブ「デイビーバーンズ/Davy Byrnes」で、ゴルゴンゾーラサンドイッチを食べる描写があるそうだ。あえて太宰で例えるならば、「人間失格の作中で、主人公が、あのバアで食べたあのオニギリ*」みたいなことだ。(*実際にそういう描写は無いが)。

デイビーバーンズ。

ゴルゴンゾーラサンドイッチ。バターもついてくる。

ゴルゴンゾーラサンドイッチを食べてすぐ考えたのは、サンドイッチの幅についてだ。「分厚さ」ではなく「定義の広さ」という意味でだ。パン2枚で挟めばもうよい。そういう態度が丸見えた。というかテーブルに運ばれてきた時、ゴルゴンゾーラは挟まれてすらいなかった。ソーダブレッド2枚の上にゴルゴンゾーラが乗っていたから、「上のゴルゴンゾーラと、下のソーダブレッドで、真ん中のソーダブレッドを挟まはるんかな?」と、京都人の私はいけずを言いそうになった。

しかしそうはいかなかった。

ひとくち食べた瞬間、いけすかない京都ジョークと「志津屋のカルネ至上主義」が、私の脳みそから同時撤退した。ゴルゴンゾーラを挟むソーダブレッドがスポンジケーキのようで、まるでチーズケーキを食べているようだった。サンドイッチの世界観-解像度-がグンと広がる。味はもちろん甘くなく、塩梅が自分好みだった。(塩加減が何もかもを最終決定する……という偏見を持つ私なので、「塩梅」をやたら高評価する傾向がある)

肝心のゴルゴンゾーラの味は、人生で食べた乳製品の中では最上位だった。最上位すぎて、私が知っていたゴルゴンゾーラ像からかけ離れていた。本当はイタリア出身くせに、パクッと噛むごとに脳内でアイルランド国旗がパタッとはためき、バグパイプ*もピーヒャラ鳴っていた(これは実際に聞こえていたかもしれない)。 ゴルゴンゾーラサンドイッチのおかげで、「美味しい」を意味する英語「savory」の最適解を見つけることができた。

*バグパイプの演奏の例。(デイビーバーンズのあるエリア)

2分

余談になるが、ダブリンといえばギネスビールだ。テーブルに運ばれてきてからスグ飲もうとすると、隣の客に「2分待て」と言われた。そそぎたてのギネスビールは液体と泡が混ざっているから、グラスの中で分離するのを待つらしい。そのための2分だ。

そそぎたてのギネスビール。

ちょうど泡が分離して、漆黒のギネスビールが正体を現したころ、ゴルゴンゾーラサンドイッチが運ばれてきた。

粋だ。

次の記事「#7 イスラエルのサシミサーモン」はこちら

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