「をかしな旅行記」のせつめい
べつに、おかしな旅行記でもよかったです。でも「をかし」のほうが、ワケありっぽくてかっこいいと思いました。そのような気持ちでやっております。ぜんぜんクレイジーなジャーニーではないです。すいません。
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おかしくない旅行記はこちら。
統国寺とは
統国寺のゲート。
「統国寺/とうこくじ」は、大阪の天王寺(てんのうじ)にあるお寺だ。「ベルリンの壁」が展示されている珍しい場所ということでも、注目を浴びている。れっきとした寺院なのだが、なぜかB級スポット色がつよい。それには、「在日コリアン*寺院」だということと、「天王寺にある」ということが関係している(と思う)。
*「在日コリアン」は朝鮮半島から日本へやってきた移民を総称する日本語。「朝鮮半島」は、現在の韓国と北朝鮮の両方を含む。
天王寺駅前商店街(って書いてある)。
統国寺は、北朝鮮の宗教団体「朝鮮仏教徒連盟/Korea Buddhist Federation」に加盟していて、ここがしばしば注目される。HPに説明があり、「北朝鮮政府のお寺ですか?」という質問に対しての回答がある。イエスともノーとも言わないタイプの文章で、西村博之がごりごりに詰めそうな日本語だった。
「はい・いいえで答えてください」と言う西村博之。
HPでは、「統国寺は朝鮮仏教徒連盟に加盟している。連盟の設立は1948年8月。設立当時は北朝鮮は無かった。連盟に加盟する信者が増えたので、連盟との関係が深まった。加盟の有無にかかわらず、信者には等しく接している。統国寺では、仏教や伝統儀式の布教に努めている。」という旨の説明だった。原文はこちら。
統国寺の「無縁仏之塔」。
朝鮮半島のデザイン。
無縁仏の名簿と、メッセージ。
統国寺の雰囲気
天王寺のいこいの場「てんしば」。奥にあべのハルカスが見える。
ラブホテルのはりぼても見える。
統国寺のある天王寺は、そこそこ大きい繁華街だ。大阪の人口はアメリカで二番目に大きい「ロサンゼルス」みたいな感じなので(ざっくり)、そうとうなダウンタウンといえる。家族でにぎわう「てんしば」もあれば、すぐそばにラブホテル街も展開している。統国寺は、風情のあるラブホテルの横にある。
統国寺のある通り。左右にラブホテル がある。
ラブホテル。
エントランス。
中の雰囲気。
敷地内は、地域のお寺という感じ。親族のお墓まいりなどで寄るタイプの。観光地という雰囲気ではなさげだ。しっかりめの会館があったり、指定有形文化財の建築物「大雄殿」もある。衣装を着て写真撮影をしているひとも何人かいた。そのせいで、テーマパークにいるような気がしなくもなかった。
会館。
「大雄殿」。
なにかの撮影。
足でプッシュするタイプの消毒液。ありがたい。(カラだったけど)
ベルリンの壁
ベルリンの壁。
ベルリンの壁のテクスチャ。
むきだしの鉄筋。
ひきで見るとこんな感じ。
反対側から見ると、あべのハルカスが見える。
「ベルリンの壁」は実物だ。統国寺に入ってすぐ右にそびえており、まずはベルリンの壁とご対面となる。展示というか、「うりにしている」くらい目立ってる気もした。京都の世界遺産「高台寺」の「鳥獣人物戯画」の展示とは真逆のスタンスだ。ちなみにベルリンの壁は、統国寺の信者が寄付したらしい。すごいな信者。
ベルリンの壁の説明。
統国寺は、その名前からもなんとなく伺えるように、「民族の統一」を意識したメッセージを発信している。南北の分断と関連させて、東西を分断したベルリンの壁を設置しているそうだ。「ドイツのように統一の日が来ることを心より祈念」と、ホームページで述べていたりもする。
展示されているベルリンの壁。@ポツダム広場/ベルリン
ベルリンの壁のテクスチャ。@ポツダム広場/ベルリン
展示されているベルリンの壁。@イーストサイドギャラリー
通称「Bruderkuss」。@イーストサイドギャラリー
イーストサイドギャラリーは、ベルリンで最も有名な観光地。
生々しい壁の跡もある。@「ベルリンの壁記念館」周辺
ベルリンの壁記念館/Die Gedenkstätte Berliner Mauer。
ベルリンの壁があった場所には、トレイルがある。
ボストンのフリーダムトレイルを思い出した。
余談だが、ベルリンには北朝鮮大使館があることでも知られている。
北朝鮮大使館の掲示板。
ホロコースト?
統国寺は、過去の朝鮮人の苦難についてさらっとホロコーストに言及してたりするので、なにかとドイツを連想させる。ドイツとイスラエルに合計6年くらい住んだ自分としては、統国寺のホロコーストへの言及については、ちょっとわかんないとこないところがあった。朝鮮人の歴史を知らなすぎるだけなのかもしれないけれど。
「ストルパーシュタイン/Stolperstein」。
そもそもホロコーストって、そんなにサラッとした話じゃない。ベルリンの家の前には「ストルパーシュタイン」という鉄の印があったりする。ホロコーストの被害者が住んでいたことを示す印だ。印には、「被害者の氏名」「連行された日」「連行先」「死因」「死亡日」なども刻まれている。家の前にお墓があるようなものだ。
5人ぶんということになる。
家の前の様子。決して珍しい光景ではない。
ストルパーシュタインはヨーロッパ全体で4万個ほどあるらしく、ベルリンには1000個ほどあるらしい。見るたびに、ホロコーストっていまでも日常生活に食い込んでくるほどの話なんだなと感じていた。ホロコーストの被害者を追悼するモニュメントも、無視できない形でたくさんある。
ベルリンの「虐殺されたヨーロッパのユダヤ人のための記念碑」。
ベルリンでは有名な観光名所だ。
ベルリンの「ユダヤ博物館」も有名。ホロコーストの被害者に関する展示。
ユダヤ博物館では、イスラエルの公用語「ヘブライ語」に関する資料も多い。
イスラエルにある、ホロコーストの犠牲者の追悼碑。@メイヤー公園/テルアビブ
ホロコーストで多くの同性愛者も被害を受けたことについて説明している。
イスラエルでは毎年、ホロコーストの追悼日「ヨム・ハショア」に、サイレンが2分間なる。このサイレンは空襲警報でも鳴る。ガザからロケット弾が飛んでくるときに鳴るやつだ。私も一度だけ本物を聞いて、防空壕に避難したことがある。どちらかというと、いやな音だ。ってあれ、何のはなししてたっけ。
ヨム・ハショアの黙祷の様子。サイレンは2:39〜
「統国寺」のまとめ
正式名所:和気山 統国寺
住所:大阪府大阪市天王寺区茶臼山町 1−31
その他:入場無料
ひとこと:「ドイツのように統一」をめざしている?
統国寺のHP
統国寺の地図。