世界ごはんたべ記#14 イスラエルのピタパンサンドイッチ屋「ミズノン・本店」

「世界ごはんたべ記」のせつめい

「世界ごはんたべ記」は、ライターのがぅちゃんによる外食の記録です。どんなお店で何を食べたか、どんなことを感じたか……などなど、じゆうに書いています。

海外ぐらしが長いので、異国のお店はひんぱんに登場します。とはいえ「世界」と名乗っている手前、母国のお店も発表していかねばなぁと思っています(……か?)。



前回の記事「#13 イスラエルのレストラン/マハネユダ」はこちら。「世界ごはんたべ記」の記事一覧はこちら

ミズノンとは

ヘブライ語で「ミズノン」とある。

「ミズノン/Miznon」は、おそらくイスラエルで一番有名なピタパンサンドイッチのお店だ。テルアビブでは間違いなく一番だろう。ピタパンは中東ではポピュラーなパンで、イスラエルではそのへんのゴミ箱にもつっこまれてるくらい一般的だ。ちなみに、日本で売ってるトルコケバブのあのパンもピタパンだ。

ゴミ箱につっこまれてるピタパン。

というかよく見ればゴミ箱ではない。

ゴミ箱としてはこっちの方が正解だ。

トルコのドネルケバブをイスラエルではシャワルマと呼ぶのだが、そのシャワルマサンドもピタパンが一般的。イスラエル最強のソウルフード「ファラフェルサンド」も、ピタパンにファラフェルを挟んで成立する。ピタパンは「ありき」のフードなので、定番料理にすらカウントされてない。あたりまえすぎて。

シャワルマサンドの例。@ファラフェル・ガーデン/京都(詳細記事

ファラフェルサンドの例。@イスラエルのイケア

「サビーフ」も忘れてはいけない。@ファラフェル・サババ/大阪(詳細記事

おっといけない、ピタパンからミズノンに話をどそう。

イスラエルのピタパンサンドは日本のおにぎりに近いものがあるけど、ストリートフードの属性が強いので屋台を想起させる。ミズノンは、ストリートフードを全推しでやってる。でもやり口はぜんぜんストリートじゃない。なんていうか、超一流料理人がカジュアルファストなどんぶり専門店を開いて優勝した、そんな感じ。

ミズノンの外観(というか内装)。

今となってはイスラエルを代表するシェフのひとり「イーヤル・シャニ/Eyal Shani」が、2011にテルアビブでオープンしたのがミズノン。現在は世界展開していて、イスラエルに3店、ニューヨークに3店、ウィーンに1店、メルボルンに1店ある。ニューヨークとかでは「イスラエルのチェーンレストラン」みたいな認識らしい。

ただしテルアビブではチェーン店のイメージではない。「いつも行列なハイスペックファストフード」みたいな印象だ。「おいしいピタパンサンドorケバブどこ?」と現地住人に聞けば、即答したらあたりまえすぎてダサいかもという躊躇もあって「ミズノンとぉ…」とか、答えてくれると思う。

イーヤル・シャニ

ミズノンはいわずもがなのキング。はいはい優勝、比べたらおもんない。みたいな感じだ。オーナーのイーヤル・シャニはコンサルタントとしてもやり手で、テルアビブで(ほんとうにほんとうにほんとうに)人気のレストラン「ロマノ/Romano」 とか「ポートサイド/Port Said」 とかもプロデュースしてる。どちらも予約がとれない。

ポートサイドの雰囲気。

ロマノの雰囲気。

カニとせいじのパスタがめっちゃおいしかった。@ロマノ

イーヤル・シャニのお店は、どこも怖いくらいにスベってない。例えばこれは、アイナ・ジ・エンドの声にぞっこんの人にとってのアイナ・ジ・エンド。彼女が何を歌おうが、「好き」は保証されてる。どんなもんかと気になるならば、いちどテルアビブの人の耳元で、ロマノ…ミズノン…イーヤル・シャニ…など囁いてみてほしい。

アイナ・ジ・エンドが歌ってるやつ。

ところでこれは、ついにイケアのキッチンにまでかみだしたイーヤル・シャニ。

イケアのキッチン&ダイニング。

「フムス」や「イスラエリサラダ」といった定番料理(詳細記事)が食卓に並ぶ。

ミズノンの雰囲気

交通量が多い大通りに面しているので、目立ってるっちゃ目立ってる。ストリートフードだけど屋台っぽくない。でもレストランな感じでもない。厨房まる見えのレジで、買ったピタパンサンドをそのまま食べるもよし、路上のテーブルがいいならそれもよし。そのへんは屋台同様にゆるめだ。

厨房兼レジ兼カウンター席。

路上の席も人でいっぱい。

ミズノンのメニュー

プリント一枚と、シンプル。

英語とヘブライ語のメニューがある。「英語のメニューがある」なんて特別な店みたいに聞こえるが、テルアビブでは普通だ。多言語対応してない店の方が、圧倒的に少ない。アイテムのカテゴリーは「ピタパンサンド」「野菜の丸焼き」「ドリンク」と、かなり簡潔。ピタパンサンドの具が10以上選べる。

でも具というか、「本来ならばそれ自体がレストランのメインコースになるようなイスラエルの現代料理を具としてます」という感じだ。ステーキ、ラムケバブ、ファラフェル、ラタトゥイユなど、種類も豊富。これは通わないとなァ困ったなァ嬉しいなァ〜。そんな気分になるメニュー。

カリフラワーロースト

いっこ丸ごと。

ストリートフード! ピタパンサンド! ラムケバブ! とせんど言っておきながら、ミズノンの代名詞的・名物メニューが実はこのカリフラワーローストだったりする。カリフラワーロースト自体はイスラエルの定番料理なのでお店のメニューによくあるが、「ミズノンのカリフラワーの丸焼き」はテルアビブの名物料理としての地位を得てる感がある。

店内にはカリフラワー専門の棚がある。

注文が入るとここからさらに加熱され、客の胃に出勤する。

カリフラワーローストの詳細記事はこちら

ラムケバブのピタパンサンド

タヒーニのソースがかかってる。野菜は、キュウリ&トマトの王道コンボ。

イスラエルでケバブはいっぱい食べたけど、他はもうぜんぜん相手にならないというか、ミズノンのラムケバブは明らかに違った。ジューシーとかだけじゃない、肉のウマミがちがう。咀嚼(そしゃく)毎に発生するエクスタシーの量が多いので、幸せがオーバードースする。もう味に集中したくて「あ゛ァ〜…」とか言って食べてた。「ケバブサンド」として解像度が最も高いところに君臨してる気がする。

ピタパンなど食べ放題

店内の「ご自由に」ゾーン。

右のトマトもいっていいのかどうかは不明。

イスラエルのストリートフードのお店は、調味料とか漬物とかがセルフサービスの食べ放題になってるところが多い。ミズノンはその文化を伝承してた。ピタパン、タヒーニ(中東のゴマペースト)のソース、トマトソース、グリーンサルサ、ヨーグルト、キャベツの漬物と種類も豊富。

ごていねいに、半分にカットされたピタパン。

右上から時計回りで、グリーンサルサ、トマトソース、タヒーニ、漬物。

この無料コーナーの具材だけで「ベジタブル・ピタパンサンド(一個800円クラス)」とか作れてしまうので、ここはもう「1000円で食べ放題」とかにしてもいいと思った。ピタパンもすんげぇおいしくて、私だったら一枚200円でも買うと思う(もしここが日本なら)。

ミズノンの住所:King George St 30, Tel Aviv-Yafo, Israel

出演-おしながき-

ミズノン/Miznon
カリフラワーロースト/The original world famous baby cauliflower/34 ILS(1020円)
ラムケバブのピタパンサンド/Lamb Kebab/46 ILS(1380円)

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「ミズノン・本店」の食レポ(英語版)