イスラエルのテルアビブに住んでいます、がぅちゃんです。
テルアビブのビーチ。
イスラエルに関する、ほんとうに典型的で初歩的な質問10件を厳選し、それらに簡潔に答えています。それぞれの問い(=トピック)にまつわる基本概念を網羅するような回答を心がけています。
(目次)イスラエルに関する問い一覧
問1. イスラエルの地図について教えて
問2. イスラエルの人口について教えて
問3. イスラエルの国旗について教えて
問4. イスラエルの宗教について教えて
問5. イスラエルの言語について教えて
問6. イスラエルの首都について教えて
問7. イスラエルの観光について教えて
問8. イスラエルの治安について教えて
問9. イスラエルとパレスチナについて教えて
問10. イスラエルには美人が多い?
問1. イスラエルの地図について教えて
イスラエルには、大きく分けて2種類の地図があります。一つは「国家としてのイスラエルの地図」。もう一つは「イスラエルを含む地域の地図」です。それぞれについて簡単に説明します。
1. 国家としてのイスラエルの地図
グーグルマップ上のイスラエル。
イスラエルは地中海の東側にあります。エジプト、ヨルダン、シリア、レバノン、パレスチナと国境を接していますが、国交があるのはヨルダンとエジプトのみ。ヨルダンとの間に「ヨルダン川西岸地区*①」、エジプトとの間に「ガザ*②」があります。
青線内の白い部分がイスラエル。緑は両方パレスチナ。Original Image by ComServant
上の地図の①の部分はパレスチナの「ヨルダン川西岸地区/West Bank」と呼ばれていて、部分的にイスラエルが管理しています(問9で後述)。②の部分はパレスチナの「ガザ/Gaza」で、パレスチナが全体を管理しています。
2. イスラエルを含む地域の地図
国家としてのイスラエルを含む中東地域は、歴史的・宗教的な解釈によって、見えてくる土地の形が変わります。大きく分けて4種類あり、「カナン」「約束の地」「パレスチナ地方」「レバント地方」です。
1. カナン/Canaan
カナンの都市を点で表した地図。現代のシリアやレバノンも含まれる。Image by IYY
現在のイスラエルとヨルダンの国境の間に、ヨルダン川というのがあります。古代の地名では、ヨルダン川と地中海の間にある土地が「カナン」と呼ばれていたそうです。
2. 約束の地/Promised Land
「約束の地」の範囲の解釈を示す地図。Image by Emmanuelm
ヘブライ語の聖書に記載されている地域のことです。「神がイスラエルの民に与えると約束した土地」と解釈されています。厳密にどこまでを含むかは、聖書の引用部分によって差があると言われています。
3. 昔のパレスチナ
イギリス委任統治領(初期)のパレスチナ。Image
1920年〜(イスラエルが建国された)1948年まで、「イギリス委任統治領パレスチナ/British Mandate for Palestine」と呼ばれていました。現在のイスラエルもパレスチナも、どちらも「パレスチナ」と呼ばれていました。
イスラエル建国直前(1947年)の「パレスチナ」。Image
4. レバント地方
レバント地方の範囲の例。Image by MapMaster
地中海の東側一帯の歴史的な名称です。この地域の食文化はとても似ていて、「レバント料理/Levantine Cuisine」と呼ばれます。「地中海系中東料理」と呼んでいいかもしれません。イスラエルの定番料理の多くもこれに含まれます。
問2. イスラエルの人口について教えて
イスラエルの発表では、約900万人となっています(2020年の時点)。しかし世界的な統計では約860万人なので、40万人分の誤差があります。この誤差は、パレスチナのヨルダン川西地区に住むイスラエル人によるものです。(問9で後述)
(国際的な認識では)ヨルダン川西地区はイスラエルではないので、そこで暮らす人の数を「イスラエルの人口」として含まないケースがあります。言い換えると、約860万人は、間違いなくイスラエル国内に暮らしていると言えます。
イスラエルの人口の推移のグラフ。Image
1948年の建国以来、イスラエルの人口は増え続けています(1950年は約130万人)。現在、イスラエル国内で人口が多い都市TOP3は、エルサレム(約90万人)、テルアビブ(約40万人)、ハイファ(約25万人)です。
問3. イスラエルの国旗について教えて
イスラエル国旗。Image
白地に青のラインと六芒星(ヘキサグラム)が描かれた、シンプルなデザインです。青のラインは、ユダヤ教徒が羽織る「タッリート」というアイテムがモチーフ。中央の六芒星は「ダビデの星/Star of David/Magen David」と呼ばれています。
エルサレムの土産屋で売られていた「タッリート/Tallit」。
ダビデの星
(現代では)ダビデの星は「ユダヤ教/ユダヤ人のシンボル」と考えられています。その始まりは、1897年の「第一回シオニスト会議(ヨーロッパのユダヤ人の集会)」で旗のデザインに採択された時だったと言われています。
つまり、図形の「ヘキサグラム」がユダヤのシンボルになったのは19世紀。歴史的には最近です。ユダヤ人が「ダビデの星」と名付け、自分のシンボルとして採用し続けて、今に至ります。
ヘキサグラム。Image
そもそも、ヘキサグラムはユダヤ以外のシンボルとしても、大昔から採用されています。日本にも「籠目(かごめ)」という編み方がありますし、画家のアルフォンス・ミュシャの絵にもしょっちゅう登場します。
京都駅で見つけた「籠目」。
世界遺産「西本願寺」の籠目。(詳細記事)
「みんなのミュシャ展」より。@京都文化博物館
「籠目とダビデの星の類似」は「日ユ同祖論(オカルトの一種)」では定番トピックですが、偶然だと思います。ヘキサグラム界隈で一番わかりやすく目立っていたのが「ダビデの星」にすぎなかっただけのような気がします。
脱線ついでに余談ですが、オクラの種類に「ダビデの星/Star of David」というのがあります。 「エアルーム/heirloom」という種類のオクラだそうです。日本のオクラより短いです。
ダビデの星を調理するアメリカ人の動画。
問4. イスラエルの宗教について教えて
イスラエルで最も信者が多い宗教はユダヤ教です。英語では「Jews」と表記されますが、その表記は「ユダヤ教徒」も「ユダヤ人」も両方含みます。イスラエルの人口の約7割はユダヤ人ですが、ユダヤ教を信仰しているユダヤ人はその半数ほど。
イスラエルにおける宗教の信者の割合。Image
上の図によると、「ユダヤ教徒41%」「宗教的でないユダヤ人40%*」「イスラム教徒14%」「キリスト教徒2%」「ドゥルーズ派1%」ということになっています。つまり、ユダヤ教を信仰していない人が全人口の半数以上ということになります。
ユダヤ教の聖地
ユダヤ教の最大の聖地は、エルサレムにある「嘆きの壁」です。これは「ヘロデ大王時代のエルサレム神殿の外壁の一部」のことで、一般的には「Western Wall/西の壁」と呼ばれています。
嘆きの壁。横488メートル、縦19メートル。
ユダヤ教徒が嘆いているように見えるため、「嘆きの壁」と呼ばれるようになった。
ユダヤ教の食事情
ユダヤ教徒は原則、食の戒律「カシュルート/Kashrut」に則った「コーシャフード/Kosher Foods」を食べます。NG食材は、タコ、イカ、甲殻類、貝、ブタ、ウサギ、ウナギなど。肉と乳製品を混ぜるのもNG です(食器や調理器具も分ける)。
ファストフード店のコーシャ認定証。@New Deli/テルアビブ
「コーシャフード」以外にも、カシュルートに則った食べ物の「パレヴェ/Pareve」というのがあります。パレヴェは「中立食」のような意味で、パンや野菜などがこれにあたります。
「Parve/パレヴェ」の表記がある、ホイップクリームスプレーの缶。
問5. イスラエルの言語について教えて
イスラエルの公用語は「ヘブライ語」です。英語で「Hebrew」、ヘブライ語で「עברית」と綴ります。「ありがとう」は「תודה/トダ」 、 「こんにちは」は「שלום/シャローム」と言います。
ヘブライ語のさらなる詳細:イスラエル旅行で最低限必要なヘブライ語フレーズ9つ
イスラエルでは、アラビア語とロシア語もよく話されます。10年ほど前までは、国民の母国語の5割がヘブライ語、2割がアラビア語、2割ロシア語だったそうです。表記はヘブライ語・英語・アラビア語の3カ国語が一般的。
テルアビブの4か国語表記。上から、ヘブライ語、英語、アラビア語、ロシア語。
ヘブライ語の歴史
日常語としてのヘブライ語は、2世紀頃に一度滅亡したと言われています。しかし19世紀に、ロシア帝国出身の「エリエゼル・ベン・イェフダー/Eliezer Ben-Yehuda」が復活させ、現在に至ります。
エリエゼル・ベン・イェフダー(の切手)。Image
現代のヘブライ語は「古代語が日常語として復活した世界で唯一の言語」とされています。なお、文法は日本語よりは英語に近いです。ちなみに、ヘブライ語で「日本」は「ヤパン/יפן」です。
>>次のページは「問6〜10」