京都ではかなり有名なライトアップイベント「東山花灯路」を見てきた。今年で最後だそう。世界遺産の清水寺や八坂神社を含む「東山エリア」が、丸ごと光っていた。海外の姉妹都市に関するライトアップもあった。
東山花灯路
東山花灯路の雰囲気。
京都で有名なライトアップイベントがある。それが「東山花灯路/ひがしやまはなとうろ」。毎年3月に開催される。
「え、冬なのに暖かくない? 」と、京都人の温度も上昇するシーズンの風物詩となっており、冬から春へのキックスタートを味わうイベントでもある。
ちなみに東山花灯路は、(2月頃から各町内の掲示板で)これでもかというほどポスターが掲示される。行ってないのに行った気にならなくもない。
中には、「まだ1回とかしか行ってないのに見飽きた」という謎の現象をこじらせている人もいる。
私は10回くらいは行った気がする(実際は3回、いや2回かもしれない。他のライトアップとごっちゃになってしまっている、これが京都)。
2022年の東山花灯路は特別で、「20年の歴史に幕」だそう。「シン・エヴァンゲリオン劇場版」のようなバイブスを放っていた。
「シン・エヴァンゲリオン劇場版」で初めてエヴァの映画を見た私なので、「じゃあこれもついでに絶対」という、ぼんやりした意気込みで見に行った。
ひとまず四条河原町の丸善へ
それなりに意気込んだが、実は本命はこっちだったりした。「丸善/まるぜん」は有名な本屋で、ダウンタウンの「四条河原町/しじょうかわらまち」にある。
「四条河原町から東山に徒歩で行く」は京都観光の定番ルートということもあり、このフォーマットでコンボすることにしていた。丸善→東山花灯路。
丸善の京都本コーナー。
丸善はというと、京都本コーナーにて、京都のトレンドがタイムリーにキュレーションされていて、流行りの理解の助けとなる。
今月末に仲良しの親戚のおばちゃんと遊ぶのだけれど、せっかくだしキレッキレの晩ごはんを食べたくて、リサーチがてら丸善する。
……つもりだった。
つもりだったというか、丸善は、した。でも、バス停から丸善への途中でちょっとしたトラブルが発生した。
ぐぅの音も出ないほど素敵な人とすれ違った。素敵すぎて、丸善も東山花灯路も、とっつぁんにぜんぶ持っていかれた。しばらく立ち尽くして考えてしまった。
そんな時に前を通った、ウクライナに関するデモ。
こんなところではまだ会えないと決め込んだものに会える喜びと悔しさ。じゃあ今なんで生きてるのかわからなくなって、哲学が奇襲する。今夜は戦る気なかったのに。
身体を無理やり丸善に持っていったものの、全然ひきづられていて、素敵な晩ごはんとか、もうどーうでもよくなった。食指が完全に活動を停止する。
例の京都本コーナーを避けるようにして、地下2階分の店内を上下左右に行き来してみる。逆に閉じ込められた気分になって、丸善の上の商業施設「バル」に逃げた。
今日は違うってわかっていたし、上ばっかり見ちゃだめと知ってはいたけれど、体がいっちゃった。べつに何か欲しかったわけじゃない。
「トゥデイズ・スペシャル」へ。
4Fのトゥデイズ・スペシャルの観葉植物コーナーに緊急避難し、8千円台のアイテムと我が家の類似品(7800円)を比較し、勝ってると自画自賛して切り替える。
ここまでで、だいたい18時だった。東山花灯路は18時に始まるので、そろそろ向かおうかしら、といったところ。
まずはバルから出ねば。
街で誰かに一目惚れして、本屋に寄って、インテリアを見て、ライトアップを鑑賞しにゆく。なんて充実した日なんだ…。まだ何も見てないのに。
八坂神社と円山公園
四条河原町サイドから見た、八坂神社。
東山花灯路が開催されている東山エリアには、いくつか(というかいくつも)見どころがある。「八坂神社/やさかじんじゃ」「清水寺/きよみずでら」が特に有名だ。
清水寺をゴールとし、八坂神社から円山公園(八坂神社の横にある、しだれ桜が有名な京都最古の公園)を経由するコースで向かった。
入ってすぐの雰囲気。
進むとなにやら光っていたが、今日じゃなくても光っている気もする。
もっと進むと、いよいよな雰囲気が出てきた。
ぬるっと光の園へ導かれてゆく。
八坂神社はちょっとわからなくて、気づいたら円山公園を歩いている…という、十年前のムーブの再到来を懐かしんだ。と同時に、今日は独りだということにも気づく。
体が勝手に桜を探したけれど、まだ何も咲いていなくて、「円山公園どこ? ここでいいの? それでいいの?」と、脳がざわざわ不安がる。
円山公園のしだれ桜は春にライトアップがあって、その時の印象が強かった。冬に桜は咲かない…と、当たり前のことを再確認。なぜかすこし安心する。
円山公園の雰囲気。
姉妹の光
ライトアップされた道。
八坂神社と円山公園を抜けると、あとはライトアップされた警備員と道を辿っていけばいい。
「ライトアップされた警備員」は比喩でもなんでもなくて、本当に光っている。欧米のパリピみたいな格好だったけど、親切に敬語で道案内してくれる。
私が言う、欧米のパリピ。
道では、火の用心ボーイズ&ガールズが京都っぽい音を撒き散らして行進しており、ライトアップイベントの一環のような状態を醸成していた。
苔のような夜の東山の香りとペアリングして、何もかも懐かしい…と、やけにざっくり入っていたら、見覚えのない青と黄色の光が視界に入ってきた。
青と黄色の光。
ウクライナのキエフのことだった。黄色と青の光を放つトールな行灯が丘にいくつも設置されており、「キエフ市への寄付金受付はこちら←」とあった。
ウクライナの国旗と同じ色で光る、行灯。
ルートを見下ろす格好でディスプレイされていたので、目立っていた。
通る人が「キエフだ」「キエフか」など言いながら、写真を撮っていく。京都市はキエフと姉妹都市なので、理にかなった姉妹愛だな、と感じた。アナ雪を超えた。
キエフを眺めていると、さっきの火の用心ボーイズ&ガールズが近づいてくるのを耳が察する。「キエフのために子供たちが行進」みたいな状態が偶然にも発生した。
この展開は予想してなくて、ひとまず見守ろうと思った。
行進が止まり、色々な説明を受けている。
ということで、解散〜! となった。
キエフの行灯は、彼らの解散場所となっているらしかった。解散の儀を終えるや否や、同行していた親御さんらしき大人達と、みんな急にほっこりしだす。
こっちとしては、ヒーローが変身を解いた瞬間を何十人分と一気に目撃した気分となり、相当な見応えがあった。なんかありがとう。
彼らより赤いものは何も無く、平和そのものだった。
清水寺
道中の坂。
を超えても、まだまだある坂。
さすが世界遺産とは言わないが、清水寺はちょっとした山の上にある。向かうまでの有名な坂が、すでに混雑していた。エナジーがギリシャのパルテノン神殿だ。
予想以上に混雑していたのと、実は先週も清水寺に来ていたのとで、正直、もう帰ろっかなという気分だった。でも、ここじゃないどこかを想うと、なぜか頑張れた。
ギリシャのパルテノン神殿。
清水寺の狛犬。
清水寺のライトアップは、令和の京都で最強のアートイベント「ARTISTS’ FAIR KYOTO 2022」の会場も兼ねていた(先週はそれを見に行った)。
有名作品はコケシと狛犬。言葉だけ並べるとちぐはぐだけど、2022年3月の京都に限り、「コケシ 狛犬」でピンとくる人は、ぼちぼちいると思う。
コケシ。
大人気といった様子。
巨大なコケシは、夜だというのに(というか一週間も経っているのに)やはり寝たきりだった。狛犬は、先日と違ってバキバキに照らされていた。まさにライトアップ。
レーザービーム(ってみんなが言っていた光)。
光だけなら、最も目立っていたのはレーザービーム(仮)だった。シン・ゴジラに出てくるゴジラが放っていたやつくらい、破壊力を感じる。
レーザービームに憧れ、目指してもみた。でも近づけば近づくほど光源の遠さを感じ、今日は哲学の日じゃないし、疲れたしで、わりとすぐ諦めた。
コケシと狛犬より枚数を撮ったかもしれない。トイレして、帰った。
いい日
清水寺から降る道はいくつかあって、バス停がある大通りまで続いている。使ったことがない道で降ってみた。
京都が武装された公衆電話を見つけた。
そもそも公衆電話が珍しい、とかが、ひとまずぶっとぶビジュアル。
賢さを極めてたとしても、一生敵わないだろう。と圧倒される。繋がるとか繋がらないとか、5とかGとかじゃない。京の裏ハイライトだった。
京都のレジェンド「四つ葉のタクシー」にも遭遇。いい日だったのかもしれない。
「京都・東山花灯路-2022」のまとめ:3/4〜3/13の開催。ライトアップは18時〜21時半。詳細はHPにて。