​​アメリカ★ゲイキャンプ体験記S3#8 ヤってんのか?

アメリカ・ニューヨーク州のゲイキャンプ「イーストンマウンテン」で4泊5日しました。「アメリカ★ゲイキャンプ体験記S3」では、現地での体験を時系列で発表します。

前回のエピソード→【S3#7 アダムとゆりちゃん】



S1「ジョーズハイダウェイ」編
S2「サコ川ハイダウェイ」編

めしめしパーティめし

日曜日だ。とわざわざ言い聞かせないと忘れる状態ではあった。日にちがどうでもよくなっていた(山小屋に4泊5日は地味に長い)。このイベント「ベアーユアソウル」は、明日おわる。今日は集大成のようなイベントが多かった。

朝ごはん。

昼ごはん。

午後のパーティ。

夜ごはん。

朝ごはんを食べ、昼ごはんを食べ、午後のパーティを経て、夜ごはんを食べた。午後のパーティというのは、ワークショップの成果を報告する発表会のような状態だった。ベリーダンスやらフリースタイルやら、イノセントでハッピーな会。

命名の儀

命名の儀の祭壇。

最後の夜なので忘れかけていたが、ベアーユアソウルの開催地であるイーストンマウンテンは、ゲイ向けのスピリチュアルな静養施設。「命名の儀(※皇室の儀式とは関係ない)」は、今一度そのコンセプトに立ち返るような、全員ほぼ強制参加の儀式。

命名の儀とは、名乗りたい自分を名乗り、それを妨げる過去と決別し、皆がそれを承認するという儀式。さっきまでパーティしてた会場に、おどろおどろしく再入場するところから始まる。入場の際、水のようなものをスプレーで噴射された。

入場の様子。

儀式の様子。

食堂の中心には祭壇が設けられ、それを囲むようにして全員で輪を作る。カルチュラルアプロプリエイション気味な格好に見えなくない進行係が、集団に指示する。我々は、東西南北に向かって、漫画「ブリーチ」の鬼道の詠唱文ような言葉を唱えた。

ここにくるまでに、我々には各々の班長から宿題が渡されていた。それは「名乗りたい名前」を決めること。そしてこの場所で、一人ずつ、輪の中心に一歩おどり出て、名乗りたい名前を発表する。例えば「我が名はアシタカ!!」のように。

名前を発表した後は、発表者以外が全員で「YOU ARE アシタカ!」「YOU ARE アシタカ!」「YOU ARE アシタカ!」と、発表者を指差して3回さけぶ。これにより、命名の儀は完結する。

主張するという行為のおさまりがよい。さすがアメリカ。

ワイはこれでいきたいんやァ! と横着でも言い切る、切実な叫びが多かった。無理と知ってる、夢やぶれてる。でも/だから、かなぐり捨てて一方的に形にする。アメリカってもんを視た気がした。滑らかなスライドドアも不器用に押し破る。

ちなみにこれが、ブリーチの鬼道の詠唱文。(漫画「ブリーチ」より)

ヤってんのかヤらされてんのか

命名の儀は、このイベント全体の仕掛け人でもある私の班長の承認欲求を満たす装置として機能してる気がした。班長はゲームマスターなので、儀式だとか、プレイが逐一うまい。毎朝、班長とミーティングしてた私は、そのようなことを感じていた。

班長の「名乗りたい名前」はミュージシャンとしての芸名に設定され、芸名は今週リリースしたアルバム名とリンクしてる。そんなアルバムの代表曲は、序盤のオリエンテーションでパフォーマンスされていた。しっかりゲームしてはる。

ミーティングで班長は、「なぜその名前にした?」と、他のメンバーに聞かれていた。「降ってきた」みたいなことを言っていた。班長は、他人も性的/承認欲求を満たす疑似体験ができるテイのプロデュースに成功したのだろう。

このイベントの参加者は多分、そんなテイ-世界観-をリアルに心から楽しんでいる。立場上しかたないとはいえログインとログオフを繰り返さなければいけない班長は、基本、疲れてるように見えた。ほんとのところはどうなーん? なんて聞けない。

次のエピソード【S3#9 なんだかんだヤっ…】